【4次の相反方程式】
- \({x}^{2}\ (\ne 0)\) で両辺を割り算する
- \(x+\frac{1}{x}=t\) とおき、\(t\) の2次方程式として解く
- \(t\) を \(x\) に戻し、\(x\) の解(4つ)を求める
【5次の相反方程式】
- 必ず、\((x+1)\) を因数に持つので、これで因数分解する
- \((x+1)\) でない方の因数は、必ず、4次の相反方程式の形をしているため、4次の相反方程式の解法を利用して解く
- \(x=-1\) と、4次の相反方程式の解(4つ)の、併せて5つが求める解となる
【6次以上の相反方程式】
- 最高次数が偶数(\(2n\) 次)
両辺を \({x}^{n}\ (\ne 0)\) で割り算し、\(x+\frac{1}{x}=t\) と置くことで、\(t\) の \(n\) 次式として解く。 - 最高次数が奇数(\((2n+1)\) 次)
必ず、\((x+1)\) で因数分解でき、\((x+1)(x\ の\ 2n\ 次式)\) の形に式変形できる。
\((x\ の\ 2n\ 次式)\) を最高次数が偶数(\(2n\) 次)の解法を利用して、\(t\) の \(n\) 次式として解く。
今回は、相反方程式の解法について解説します。
相反方程式は、高校数学で出てくる、「初見では太刀打ちできないけど、知っていればなんてことないよねランキング」があるとすると、5本の指には入ってくると思います。
(ちなみに、1位は「確率漸化式」だと思います)
そんな、知っているか・いないか、問題を解いた経験があるか・ないか、で大きく差がついてしまう「相反方程式」について、今回は丁寧に解説していきます。
ぜひ、「相反方程式なんて初見だった」という方も、「既に知ってたよー」という方も、今回の解説を通じて、相反方程式の理解を深め、周りと差をつけていきましょう!
解説
相反方程式とは
突然ですが、例題です。こちらの4次方程式を解いて下さい。
\[{x}^{4}+2{x}^{3}-{x}^{2}+2x+1=0\]
・・・いかがでしょうか?
少し勉強されている方は、因数定理を利用して、代入して \(0\) となるような値を探してみたかもしれません。
しかし、実は、こちらの方程式は、実数の範囲で解を持たず、因数定理を使うのはなかなか難しいです。。
その他の解法として、4次方程式の解の公式(フェラーリの公式)というものがあります。
これを使えば解くことはできますが、メチャクチャ複雑な形をしており、実用的ではありません。
では、この方程式は解けないのか。
実は、係数に着目すると、因数定理が通用しないような4次方程式でも、解ける場合があります。
もう一度、与えらえた4次方程式を見てみましょう。
\[{x}^{4}+2{x}^{3}-{x}^{2}+2x+1=0\]
こちらの左辺の係数だけ取り出すと、左(高次の項)から、\(1,2,-1,2,1\) となっています。
次に、これを右(低次の項)から見ると、\(1,2,-1,2,1\) となり、左から見た時と同じになります。
このような、
係数だけを取り出したときに、
左から読んでも、右から読んでも同じである方程式を、「相反方程式」
といいます。
そして、この「相反方程式」は、(大学入試で出てくる範囲であれば、)因数定理を使えなくても、解くことができます!
次の章から、具体的に相反方程式を解いてみましょう!
※非常にどうでもいいことですが、
相反方程式を見るたびに、左から読んでも、右から読んでも同じなので、「回文方程式」の方がわかりやすいのにな・・・と、個人的には思ったりしてます。
相反方程式の解法
4次方程式
それでは、先ほどの例題を実際に解いてみましょう。
\[{x}^{4}+2{x}^{3}-{x}^{2}+2x+1=0\]
相反方程式のポイントは、両辺を、\({x}^{最高次数の半分}\) で割り算することです。
つまり、今回の例でいうと、最高次数が4次なので、\(4\div 2=2\) で、\({x}^{2}\) で両辺を割り算します。
与えられた方程式の左辺に、\(x=0\) を代入すると、
\[\begin{alignat*}{3}
(左辺)&={0}^{4}+2\cdot{0}^{3}-{0}^{2}+2\cdot 0+1 \\
&=1 \\
&\ne (右辺)\ (=0)
\end{alignat*}\]
であり、\((x=0\) は解ではない\()\) \(\Leftrightarrow\ ({x}^{2}\ne 0)\) に注意して、両辺を \({x}^{2}\) で割り算すると、
\[{\small\begin{alignat*}{3}
&{x}^{2}+2x-1+2\cdot\frac{1}{x}+\frac{1}{{x}^{2}}=0 \\
\Longleftrightarrow\ &\Bigl({x}^{2}+\frac{1}{{x}^{2}}\Bigr)+2\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-1=0 \\
\stackrel{\mathrm{(※)}}{\Longleftrightarrow}\ &\Biggl\{{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}-2\Biggr\}+2\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-1=0 \\
\Longleftrightarrow\ &{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}+2\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-3=0\quad・・・①
\end{alignat*}}\]
※ここでは、次の式変形を利用しています。
\[\begin{alignat*}{3}
&{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}={x}^{2}+2\cdot x\cdot\frac{1}{x}+\frac{1}{{x}^{2}} \\
\Leftrightarrow\ &{x}^{2}+\frac{1}{{x}^{2}}={\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}-2
\end{alignat*}\]
ここで、等式① \({\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}+2\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-3=0\) において、
\[x+\frac{1}{x}=t\]
とおくと、
\[{t}^{2}+2t-3=0\]
という \(t\) の2次式が得られました。
この \(t\) についての2次方程式を解くと、
\[\begin{alignat*}{3}
&{t}^{2}+2t-3=0 \\
\Leftrightarrow\ &(t-1)(t+3)=0 \\
&\therefore\ t=1,-3
\end{alignat*}\]
今、\(x+\frac{1}{x}=t\) と置いていたので、これを \(x\) の式に戻すと、
\(t=1\) | \(t=-3\) |
\[\begin{alignat*}{3} &x+\frac{1}{x}=1 \\ \stackrel{\mathrm{(※)}}{\Longleftrightarrow}\ &{x}^{2}-x+1=0 \\ \therefore\ x&=\frac{1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{alignat*}\] | \[\begin{alignat*}{3} &x+\frac{1}{x}=-3 \\ \stackrel{\mathrm{(※)}}{\Longleftrightarrow}\ &{x}^{2}+3x+1=0 \\ \therefore\ x&=\frac{-3\pm\sqrt{5}}{2} \end{alignat*}\] |
となり、無事に、4次方程式の4つの解を求めることができました!
(※)こちらの式変形では、両辺に \(x\) を掛け算し、全て左辺に移項しています。
5次方程式
続いて、5次の相反方程式を見ていきます。
・・・が、実は、5次の相反方程式は、4次の相反方程式に次数を下げて解くことになります。
そのカラクリさえ理解できれば、何も難しいことはありませんので、ぜひ気軽に見ていきましょう!
こちらの5次方程式を考えます。
\[{x}^{5}+a{x}^{4}+b{x}^{3}+c{x}^{2}+dx+e=0\]
今、相反方程式を考えているため、\(c=b,\)\(d=a,\)\(e=1\) であり、この方程式は、以下のように変形することができます。
\[{x}^{5}+a{x}^{4}+b{x}^{3}+b{x}^{2}+ax+1=0\]
ここで、左辺に、\(x=-1\) を代入すると、
\[\begin{alignat*}{3}
(左辺)&={x}^{5}+a{x}^{4}+b{x}^{3}+b{x}^{2}+ax+1 \\
&={(-1)}^{5}+a\cdot{(-1)}^{4}+b\cdot{(-1)}^{3} \\
&\qquad+b\cdot{(-1)}^{2}+a\cdot(-1)+1 \\
&=-1+a-b+b-a+1 \\
&=0
\end{alignat*}\]
したがって、因数定理より、5次の相反方程式は、必ず、\((x+1)\) を因数に持つことがわかります。
※因数定理は、こちらをご覧ください
実際に左辺を \((x+1)\) で因数分解すると、
\[\begin{alignat*}{3}
&(左辺) \\
&{\small=(x+1)\{{x}^{4}+(a-1){x}^{3}+(b-a+1){x}^{2}+(a-1)x+1\}}
\end{alignat*}\]
ここで、後ろの中カッコ \(\{\}\) の中の式について、
係数に注目すると、\(1,(a-1),(b-a+1),(a-1),1\) となり、4次の相反方程式となっていることがわかります。
これは、前の章で見た、4次の相反方程式の解法を利用すれば、解くことができます。
したがって、求める5つの解は、
- \(x=-1\)
- 4次の相反方程式の解
と求めることができました!
6次以上の方程式
大学入試で出てくるのは、ほとんど4次・5次までで、6次以上の方程式が出てくることは、まずありません。
ただ、もし万が一出てしまった場合は、このようにして解くことができます。
- 最高次数が偶数(\(2n\) 次)
両辺を \({x}^{n}\ (\ne 0)\) で割り算し、\(x+\frac{1}{x}=t\) と置くことで、\(t\) の \(n\) 次式として解く。 - 最高次数が奇数(\((2n+1)\) 次)
必ず、\((x+1)\) で因数分解でき、\((x+1)(x\ の\ 2n\ 次式)\) の形に式変形できる。
\((x\ の\ 2n\ 次式)\) を最高次数が偶数(\(2n\) 次)の解法を利用して、\(t\) の \(n\) 次式として解く。
<例題(6次方程式)>
以下の6次の相反方程式を考えてみます。
(係数は、\(1,2,5,-1,5,2,1\))
\[{x}^{6}+2{x}^{5}+5{x}^{4}-{x}^{3}+5{x}^{2}+2x+1=0\]
両辺を、\({x}^{3}\ (\ne 0)\) で割り算すると、
\[{\small\begin{alignat*}{3}
&{x}^{3}+2{x}^{2}+5x-1+5\cdot\frac{1}{x}+2\cdot\frac{1}{{x}^{2}}+\frac{1}{{x}^{3}}=0 \\
\Longleftrightarrow\ &\Bigl({x}^{3}+\frac{1}{{x}^{3}}\Bigr)+2\Bigl({x}^{2}+\frac{1}{{x}^{2}}\Bigr)+5\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-1=0 \\
\stackrel{\mathrm{(※)}}{\Longleftrightarrow}\ &\Biggl\{{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{3}-3\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)\Biggr\} \\
&\quad+2\Biggl\{{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}-2\Biggr\}+5\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-1=0 \\
\Longleftrightarrow\ &{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{3}+2{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}+2\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-5=0\quad
\end{alignat*}}\]
※ここでは、次の式変形を利用しています。
\[\begin{alignat*}{3}
&{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}={x}^{2}+2\cdot x\cdot\frac{1}{x}+\frac{1}{{x}^{2}} \\
\Leftrightarrow\ &{x}^{2}+\frac{1}{{x}^{2}}={\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}-2
\end{alignat*}\]
\[\begin{alignat*}{3}
&{\small{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{3}={x}^{3}+3{x}^{2}\cdot\frac{1}{x}+3x\cdot \frac{1}{{x}^{2}}+\frac{1}{{x}^{3}}} \\
\Leftrightarrow\ &{x}^{3}+\frac{1}{{x}^{3}}={\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{3}-3\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)
\end{alignat*}\]
あとは、以下の手順を行えば、解を得ることができます。
- 等式 \({\small{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{3}+2{\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)}^{2}+2\Bigl(x+\frac{1}{x}\Bigr)-5=0}\) で、\(x+\frac{1}{x}=t\) とおく
- \(t\) についての3次式とみて解く
(補足)ある次数の項が、歯抜けになっている相反方程式
最後に、補足として、こんな方程式を見てみたいと思います。
\[{x}^{5}+3{x}^{3}+3{x}^{2}+1=0\]
一見見落としがちなのですが、実は、こちらも相反方程式です。
どういうことかというと、今、書かれていない4次・1次の項を無理やり書いてみると、
\[{x}^{5}+0\cdot{x}^{4}+3{x}^{3}+3{x}^{2}+0\cdot x+1=0\]
となります。この形で左辺の係数に注目すると、\(1,0,3,3,0,1\) となり、確かに左から見ても右から見ても、同じ並びになっていることがわかります。
そして、実際に、\((x+1)\) で因数分解してみると、
\[\begin{alignat*}{3}
&(左辺) \\
&=(x+1)\{{x}^{4}-{x}^{3}+4{x}^{2}-x+1\}
\end{alignat*}\]
この後ろの中カッコ \(\{\}\) について、係数に着目すると、確かに、4次の相反方程式の形をしており、上で見た解法で同様に解くことができます。
おわりに
お疲れさまでした!今回は、相反方程式について解説してきました。
ここまで読んでいただくと、多少、計算は煩雑になるが、手を動かせば解けないことはない、ということが理解いただけたのではないかと思います。
4次以上の方程式ともなると、項数が増えることで、その見た目に圧倒されますし、解の公式もわからないので、解けない・・・とあきらめてしまいがちです。
しかし、高校数学(大学入試)で出てくる方程式は、必ず、解けるように作られています。
一見解けそうにない方程式も、今回解説した相反方程式や、複2次式など、いくつかの解法のパターンを知っていれば、必ず解けます。
※解けない場合は、計算ミスか、解く必要がない方程式(方程式を解かなくても最終的な答えには行きつける)、のどちらかです
逆に覚えてなければ、一生解けないのがこれらの解法パターンの厄介なところでもあります。。。
ぜひ、理解できるまで何度も復習し、盤石な知識に仕上げていきましょう!
(複2次式については、別の機会に解説する予定です)
【4次の相反方程式】
- \({x}^{2}\ (\ne 0)\) で両辺を割り算する
- \(x+\frac{1}{x}=t\) とおき、\(t\) の2次方程式として解く
- \(t\) を \(x\) に戻し、\(x\) の解(4つ)を求める
【5次の相反方程式】
- 必ず、\((x+1)\) を因数に持つので、これで因数分解する
- \((x+1)\) でない方の因数は、必ず、4次の相反方程式の形をしているため、4次の相反方程式の解法を利用して解く
- \(x=-1\) と、4次の相反方程式の解(4つ)の、併せて5つが求める解となる
【6次以上の相反方程式】
- 最高次数が偶数(\(2n\) 次)
両辺を \({x}^{n}\ (\ne 0)\) で割り算し、\(x+\frac{1}{x}=t\) と置くことで、\(t\) の \(n\) 次式として解く。 - 最高次数が奇数(\((2n+1)\) 次)
必ず、\((x+1)\) で因数分解でき、\((x+1)(x\ の\ 2n\ 次式)\) の形に式変形できる。
\((x\ の\ 2n\ 次式)\) を最高次数が偶数(\(2n\) 次)の解法を利用して、\(t\) の \(n\) 次式として解く。
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