実数 \(a,b\) と、自然数 \(m,n\) に対し、
- \({a}^{m+n}={a}^{m}\cdot{a}^{n}\)
- \({a}^{m-n}={a}^{m}\div{a}^{n}\quad(a\ne 0,m>n)\)
- \(({a}^{m})^{n}={a}^{mn}\)
- \({(ab)}^{m}={a}^{m}\cdot{b}^{m}\)
- \((\frac{a}{b})^{m}=\frac{{a}^{m}}{{b}^{m}}\quad(b\ne 0)\)
解説
\({a}^{m+n}={a}^{m}\cdot{a}^{n}\)
この左辺は、\(a\) が、\((m+n)\) 回掛け算されている、ということと同じ意味です。
そして、これは、
- \(a\) を \(m\) 回掛け算された部分
- \(a\) を \(n\) 回掛け算された部分
とに分けることができます。(下の図参照)
したがって、\({a}^{m+n}={a}^{m}\cdot{a}^{n}\) が導けました。

\({a}^{m-n}={a}^{m}\div{a}^{n}\quad(a\ne 0,m>n)\)
自然数 \(m\) は、\(m=(m-n)+n\) と変形できます。
また、\(m,n\) がいずれも自然数で、かつ、\(m>n\) のとき、\((m-n)\) も自然数になることに注意すると、上の \({a}^{△+■}={a}^{△}\cdot{a}^{■}\) という公式を使えば、以下の式が成り立ちます。(△に \(m-n\)、■に \(n\) を代入しました)
\[{a}^{m}={a}^{m-n}\cdot{a}^{n}\]
ここで、\(a\ne 0\) なので、\({a}^{n}\ne 0\) であることに注意して(\(0\) でない実数を何乗しても、\(0\) にはならない)、両辺を \({a}^{n}\) で割ると、
\[{a}^{m-n}={a}^{m}\div{a}^{n}\]
が得られました。

\(({a}^{m})^{n}={a}^{mn}\)
左辺は、\({a}^{m}\) が、\(n\) 回掛け算されている、ということと同じ意味です。
そして、このとき、\(a\) の個数に注目すると、\(a\) は、\((m\times n)\) 回掛け算されていることがわかります。(下の図参照)
したがって、\(({a}^{m})^{n}={a}^{mn}\) が導けました。

\({(ab)}^{m}={a}^{m}\cdot{b}^{m}\)
左辺は、\(ab\) が、\(m\) 回掛け算されている、ということと同じ意味です。
そして、掛け算の順番は入替可能なことに注意すると、このとき、\(a\) の個数に注目すると、\(a\) は、\((m\times n)\) 回掛け算されていることがわかります。(下の図参照)
したがって、\({(ab)}^{m}={a}^{m}\cdot{b}^{m}\) が導けました。

\((\frac{a}{b})^{m}=\frac{{a}^{m}}{{b}^{m}}\quad(b\ne 0)\)
上で確認した、\({(ab)}^{m}={a}^{m}\cdot{b}^{m}\) という公式について、\(b\ne 0\) の場合を考えます。
\(b\ne 0\) なので、\({b}^{m}\ne 0\) であることに注意して(\(0\) でない実数を何乗しても、\(0\) にはならない)、両辺を \({b}^{m}\) で割ると、
\[\frac{(ab)^{m}}{{b}^{m}}={a}^{m}\quad・・・①\]
ここで新たな文字 \(a’\) を用意して、以下のように定義します。
\[a’=ab\quad・・・②\]
②の両辺を \(b\ (\ne 0)\) で割ると、
\[a=\frac{a’}{b}\quad・・・③\]
②③を①に代入すると、
\[\frac{{(a’)}^{m}}{{b}^{m}}=\biggr(\frac{a’}{b}\biggr)^{m}\]
この式の \(a’\) を \(a\) と置き直し、左辺と右辺を入れ替えれば、
\[\biggr(\frac{a}{b}\biggr)^{m}=\frac{{a}^{m}}{{b}^{m}}\]
を得られました。
おわりに
今回は、指数が自然数の場合の、指数法則を解説しました。
「指数が自然数の場合の」とつけたのは、実は、この指数法則は、自然数以外(整数・有理数・実数・複素数)の場合にも成り立つためです!(※)
※複素数の場合に、指数法則が成立するためは、いくつか条件を与える必要があります。
複素数を除いた、整数・有理数・実数の場合については、数学IIのほうで解説していますので、興味を持たれた方は確認してみてください!
(※ここからは少々発展的な内容なので、お時間ない方は飛ばしてください)
ちなみに、\({a}^{m-n}={a}^{m}\div{a}^{n}\quad(a\ne 0,m>n)\) の導出を少し思い出してみましょう。(忘れた方は、解説へジャンプ)
こちらの導出は、
自然数の範囲で確認済の \({a}^{△+■}={a}^{△}\cdot{a}^{■}\) という公式を利用する
という方針で進めるために、\(m>n\) という条件を設けました。
この条件が、もし無ければ、
- \(m=n\) のとき、左辺\(={a}^{0}\),右辺\(={a}^{m}\div{a}^{m}=1\)
- \(m<n\) のとき、\(m-n<0\) のため、左辺は、実数 \(a\) のマイナス乗
という式を得ることができます。これの何がうれしいかというと、
- 今までは、指数には、自然数しか入れることができなかった
- 自然数で得られた性質を、より広い範囲(整数・有理数・実数・複素数)で利用できるようにすることで、より広い範囲で、計算したり、様々な性質を確かめたりできる
ということになります。
大学の数学では、このような「拡張」を考えることが、しばしばあります。ぜひ、興味を持たれた方は調べてみてください。
実数 \(a,b\) と、自然数 \(m,n\) に対し、
- \({a}^{m+n}={a}^{m}\cdot{a}^{n}\)
- \({a}^{m-n}={a}^{m}\div{a}^{n}\quad(a\ne 0,m>n)\)
- \(({a}^{m})^{n}={a}^{mn}\)
- \({(ab)}^{m}={a}^{m}\cdot{b}^{m}\)
- \((\frac{a}{b})^{m}=\frac{{a}^{m}}{{b}^{m}}\quad(b\ne 0)\)
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