1次不定方程式の整数解の存在条件

自然数 \(a,\)\(b,\)\(c\) に対して、\(x,\)\(y\) に関する不定方程式 \(ax+by=c\) を考える。このとき、

\(ax+by=c\) が整数解をもつ
\(\Leftrightarrow\ c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数

※特に、\(c=1\) のとき、

\(ax+by=1\) が整数解をもつ
\(\Leftrightarrow\ 1\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数
\(\Leftrightarrow\ a\) と \(b\) は互いに素

今回は、1次不定方程式の整数解の存在条件について見ていきます。

こちらの1次不定方程式は、素数や、ユークリッドの互除法など、様々な問題と絡めて出題できるため、入試問題としても出題しやすい分野になります。

証明は、少々長くなってしまいますが、ゆっくり丁寧に考えれば、それほど難しいことは言っていませんので、ぜひ、証明問題の練習と思って、お付き合いいただけると幸いです。

それでは始めていきましょう!

解説

具体例

まずは、こちらの命題について、具体例を使って、その意味を確認してみましょう。

自然数 \(a,\)\(b,\)\(c\) に対して、\(x,\)\(y\) に関する不定方程式 \(ax+by=c\) を考える。このとき、

\(ax+by=c\) が整数解をもつ
\(\Leftrightarrow\ c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数

\(4x+2y=3\)

こちらの方程式では、\(a=4,\)\(b=2\) となるため、その最大公約数は \(2\) です。

一方で、\(c=3\) のため、「\(c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数 \(2\) の倍数」ではありません。

したがって、こちらの1次不定方程式は、整数解をもちません。

※別の見方をしてみると、

  • 左辺の係数は、\(4,\)\(2\) なので、必ず、偶数
  • 右辺は、\(3\) なので、奇数

となり、偶奇が一致しないことからも、整数解が存在しないことがわかります。

\(2x+7y=3\)

こちらの方程式では、\(a=2,\)\(b=7\) となるため、その最大公約数は \(1\) です。(=互いに素)

一方で、\(c=3\) のため、「\(c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数 \(1\) の倍数」です。(\(1\times 3=3=c\))

したがって、こちらの1次不定方程式は、整数解をもちます。

※実際に、\((x,\)\(y)=(-2,\)\(1)\) とすると、\(2\cdot(-2)+7\cdot 1=3\) となり、解を見つけることができます。

※1次不定方程式の整数解は、存在する場合、一般に、無数に存在します。
(この1次不定方程式の解も、\((x,\)\(y)=(7k-2,\)\(-2k+1)\ (k\) は整数\()\) となります。)

具体的な求め方は、こちらのページで解説していますので、併せてご覧ください。

証明

それでは、先ほどの命題を証明してみましょう。

自然数 \(a,\)\(b,\)\(c\) に対して、\(x,\)\(y\) に関する不定方程式 \(ax+by=c\) を考える。このとき、

\(ax+by=c\) が整数解をもつ
\(\Leftrightarrow\ c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数

※特に、\(c=1\) のとき、

\(ax+by=1\) が整数解をもつ
\(\Leftrightarrow\ 1\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数
\(\Leftrightarrow\ a\) と \(b\) は互いに素

<証明>
\(\Rightarrow\)\(,\)\(\Leftarrow\) に分けて証明します。

(\(\Rightarrow\))
\(ax+by=c\) の整数解(の1つ)を \((x,\)\(y)=(m,\)\(n)\) とすると、

\[am+bn=c・・・①\]

となります。

ここで、\(a,\)\(b\) の最大公約数を \(g\) とすると、整数 \(p,\)\(q\) を用いて、

  • \(a=p\cdot g\)
  • \(b=q\cdot g\)

と表せます。これを①に代入して、

\[\begin{alignat*}{3}
&am+bn=c \\
\Leftrightarrow\ &(p\cdot g)\cdot m+(q\cdot g)\cdot n=c \\
\Leftrightarrow\ &(p\cdot m+q\cdot n)\cdot g=c
\end{alignat*}\]

ここで、\(m,\)\(n,\)\(p,\)\(q\) はいずれも整数なので、\(p\cdot m+q\cdot n\) も整数であり、\(c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数 \(g\) の倍数であることが示されました。

(\(\Leftarrow\))
先に、1つ補題を証明します。

<補題>
互いに素な自然数 \(s,\)\(t\) に対して、

\[\begin{alignat*}{3}
&s,2s,3s,\dots, \\
&\quad\dots,k\cdot s,\dots,l\cdot s,\dots, \\
&\quad\quad\dots,(t-2)s,(t-1)s
\end{alignat*}\]

を \(t\) で割った余り \({r}_{1},\dots,{r}_{t-1}\) はすべて異なる(\({r}_{k}\ne{r}_{l}\))。
そして、\({r}_{k}=1\) となる \(k\ (1\leqq k\leqq t-1)\) が存在する。

<証明>
割り算の定義から、一般に、余りは、\(0\) 以上・割る数未満の数となります。(※)

一方で、今、\(s,\)\(t\) は、互いに素な自然数なので、\(1\leqq k\leqq t-1\) である \(k\) に対して、\(ks\) は \(t\) では割り切れません。
したがって、\(ks\) を \(t\) で割った余り \({r}_{k}\) は \(1\) 以上の数であり、(※)と合わせて、

  • \(ks=t\cdot {q}_{k}+{r}_{k}\)・・・①
  • \(1\leqq {r}_{k} \leqq t-1\)・・・②

となります。(\({q}_{k}\) は割り算の商です)

ここで、\(l\ne k,\)\(1\leqq l\leqq t-1\) である \(l\) を考えると、①式で、\(k\) を \(l\) に置き換えて、

\[ls=t\cdot {q}_{l}+{r}_{l}・・・③\]

となり、③-①より、

\[(l-k)s=t\cdot({q}_{l}-{q}_{k})+({r}_{l}-{r}_{k})\]

という関係式が得られます。

ここで、\({r}_{l}-{r}_{k}=0\) と仮定すると、

\[(l-k)s=t\cdot({q}_{l}-{q}_{k})\]

今、\(s,\)\(t\) は、互いに素な自然数なので、

  • \(l-k=t\)・・・④
  • \(s={q}_{l}-{q}_{k}\)・・・⑤

となりますが、④から、\(l=t+k\) となってしまい、これは、\(1\leqq l\leqq t-1\) に矛盾します。

したがって、\(k\ne l\) のとき、

\[{r}_{k}-{r}_{l}\ne 0\ \Leftrightarrow\ {r}_{k}\ne{r}_{l}\]

とわかりました。

また、以上の検討より、次の3つがわかっています。

  • \(k\) は、\(1\leqq k\leqq t-1\) の \((t-1)\) 個の値をとりえる(\(\because\) 前提)
  • 余り \({r}_{k}\) は、\(1\leqq {r}_{k} \leqq t-1\) の \((t-1)\) 個の値をとりえる(\(\because\) ②)
  • \(k\ne l\) のとき、\({r}_{k}\ne{r}_{l}\)(\(\because\) 直前の証明)

これら3つのことから、\({r}_{k}=1\) となる \(k\ (1\leqq k\leqq t-1)\) が存在することが示されました。

(証明終了)

改めて、上の補題を用いて、以下の証明を行います。

\(ax+by=c\) が整数解をもつ
\(\Leftarrow\ c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数

\(a,\)\(b\) の最大公約数を \(g\) とすると、互いに素である整数 \(p,\)\(q\) を用いて、

  • \(a=p\cdot g\)
  • \(b=q\cdot g\)

と表せます。

\(p,\)\(q\) は互いに素なので、先ほどの補題から、

\(mp\) を \(q\) で割った余りが \(1\) となるような \(m\ (1\leqq m\leqq q-1)\) が存在し、
\(mp=qn+1\)

と書けます。(\(n\) は割り算の商です)

したがって、

\[\begin{alignat*}{3}
&mp=qn+1 \\
&\Leftrightarrow\ pm-qn=1 \\
&\Leftrightarrow\ (p\cdot g)\cdot m-(q\cdot g)\cdot n=g \\
&\Leftrightarrow\ am-bn=g
\end{alignat*}\]

ここで、与えられた条件「\(c\) は \(a\) と \(b\) の最大公約数の倍数」より、\(c=kg\) とすると、

\[\begin{alignat*}{3}
&am-bn=g \\
&\Leftrightarrow\ k\cdot am-k\cdot bn=kg \\
&\Leftrightarrow\ a\cdot(km)+b\cdot(-kn)=c
\end{alignat*}\]

\(k,\)\(m,\)\(n\) はいずれも整数なので、\(km,\)\(-kn\) も整数です。

したがって、\(ax+by=c\) は、整数解 \((x,\)\(y)=\)\((km,\)\(-kn)\) をもつことが示されました。

(証明終了)

整数(整式ではない)の割り算の定義については、こちらのページで少し言及しています。

おわりに

お疲れさまでした!今回は、1次不定方程式の整数解の存在条件について見てきました。

ひょっとすると気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、途中で証明したこちらの補題は、あの「フェルマーの小定理」の証明でも現れる、非常に有名なものになります。

<補題>
互いに素な自然数 \(s,\)\(t\) に対して、

\[\begin{alignat*}{3}
&s,2s,3s,\dots, \\
&\quad\dots,k\cdot s,\dots,l\cdot s,\dots, \\
&\quad\quad\dots,(t-2)s,(t-1)s
\end{alignat*}\]

を \(t\) で割った余り \({r}_{1},\dots,{r}_{t-1}\) はすべて異なる(\({r}_{k}\ne{r}_{l}\))。
そして、\({r}_{k}=1\) となる \(k\ (1\leqq k\leqq t-1)\) が存在する。

「フェルマーの小定理」については、こちらのページで解説していますので、整数問題の更なる得点力UPに向けて、ぜひこちらも参照してみてください!

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