【3の倍数】
各位の和が、3の倍数の場合、3の倍数
【9の倍数】
各位の和が、9の倍数の場合、9の倍数
【11の倍数】
1桁目から、足す→引く→足す→引く→・・・と繰り返して、その結果が0か11の倍数の場合、11の倍数
今回は、ある数が、何の倍数になるか判定する方法を解説していきます。
素因数分解が必要な時、ただ闇雲に割り切れるかを確認するのは、非常に時間のムダです。
素因数を見つけられず焦ってしまう → 焦って計算ミスをして、さらに時間のロスに・・・なんていう悪循環に陥らないためにも、最低限知っておくべき、倍数の見つけ方をまとめました。
各倍数の判定法には、2パターンの証明もつけていますので、証明の書き方がわからない!という方にも、ぜひご覧いただきたい内容になっています。
それでは解説に入ります。
解説
倍数の判定法
3の倍数
まずは、3の倍数から確認します。3の倍数は、
各位の和が、3の倍数の場合、3の倍数
となります。いくつか例を見てみると、
各位の和は? | 3の倍数? | |
123 | 1+2+3=6 →3の倍数 | 「123」は3の倍数 (123=3×41) |
1234 | 1+2+3+4=10 →3の倍数でない | 「1234」は3の倍数でない (1234=3×411+1) |
111111111 (1が9個) | 1+1+1+1+1+1+1+1+1=9 →3の倍数 | 「111111111」は3の倍数 (111111111=3×37037037) |
のように判定できます。では、なぜ上記のような判定ができるのか、証明を見ていきましょう。
【証明】(式変形)
任意の自然数 \(N\) は、数列 \(\{{a}_{n}\}\) を用いて、以下のように表せます。
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&10\cdot {a}_{1} \\
+&{10}^{2}\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&{10}^{n}\cdot {a}_{n}\quad・・・①
\end{alignat*}\]
なお、このとき、任意の \(k\ (0\leqq k\leqq n)\) に対して、\({a}_{k}\) は、\(0~9\) のいずれかの整数をとります。
ここで、数列 \(\{{b}_{n}\}\) を導入し、以下のように定義します。(ex. \({b}_{3}=999\))
\[{b}_{k}\stackrel{\mathrm{def}}{=}「k桁の、各位が全て9の数」\]
すると、①は、以下のように表せます。
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &{a}_{0} \\
+&{a}_{1}+({b}_{1}\cdot {a}_{1}) \\
+&{a}_{2}+({b}_{2}\cdot {a}_{2}) \\
+&・・・ \\
+&{a}_{n}+({b}_{n}\cdot {a}_{n})
\end{alignat*}\]
(★)ここで、任意の \(k\ (1\leqq k\leqq n)\) に対して、\({b}_{k}\) は、各位が全て \(9\) の数であることから、\({b}_{k}\) は、全て、\(3\) の倍数であることがわかります。(ex. \({b}_{4}=9999=3\times 3333\))
したがって、\(N\) は、\(3\) の倍数 \({N}_{0}\) を用いて、
\[\small{N={a}_{0}+{a}_{1}+・・・+{a}_{n}+{N}_{0}}\quad・・・②\]
と書けます。
また、与えられた条件より、
\[\begin{alignat*}{3}
&N の各位の和が\ 3\ の倍数 \\
\Leftrightarrow&\ \ {a}_{0}+{a}_{1}+・・・+{a}_{n}\ は\ 3\ の倍数
\end{alignat*}\]
であるため、②は、
\[N=(3\ の倍数)+(3\ の倍数)\]
となり、右辺は全体で \(3\) の倍数となるから、\(N\) は \(3\) の倍数であることがわかりました。
(証明終了)
なお、上記の証明より、命題の「裏」が成立することも明らかです。
【命題の「裏」】
各位の和が、3の倍数でない場合、3の倍数ではない
(別解)合同式を利用した証明
別解として、合同式を利用した証明を見てみたいと思います。
合同式が不安な方は、先にこちらのページを確認するようにしてください。
【証明】(合同式)
任意の \(k\ (0\leqq k\leqq n)\) に対して、\(10 \equiv 1\pmod 3\) より、\({10}^{k} \equiv 1\pmod 3\) であることに注意すると、①式は以下のように変形できます。
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&10\cdot {a}_{1} \\
+&{10}^{2}\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&{10}^{n}\cdot {a}_{n}\quad・・・①
\end{alignat*}\]
\[\begin{alignat*}{3}
N\equiv\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&1\cdot {a}_{1} \\
+&1\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&1\cdot {a}_{n}\quad\pmod 3
\end{alignat*}\]
したがって、
\[\small{N\equiv{a}_{0}+{a}_{1}+・・・+{a}_{n}}\quad\pmod 3\]
与えられた条件より、右辺は \(3\) の倍数であり、右辺 \(\equiv 0\pmod 3\) のため、\(N\) は\(3\) の倍数であることがわかりました。
(証明終了)
9の倍数
続いて、9の倍数について見てみましょう。9の倍数は、
各位の和が、9の倍数の場合、9の倍数
実は、こちらは、3の倍数のときの証明を、少しだけカスタマイズするだけで導くことができます。
具体的には、3の倍数の証明の中で、(★)をつけている箇所を、任意の \(k\ (1\leqq k\leqq n)\) に対して、\({b}_{k}\) は 9 の倍数である と変更することになります。
こちらは、証明問題の練習も兼ねて、ぜひみなさんご自身で挑戦してみてください!
11の倍数
次は、11の倍数に見てみましょう。11の倍数は、
1桁目から、足す→引く→足す→引く→・・・と繰り返して、その結果が0か11の倍数の場合、11の倍数
です。具体例を見てみると、
各位を交互に足す・引くすると? | 11の倍数? | |
121 | 1-2+1=0 →0 | 「121」は11の倍数 (121=11×11) |
1212 | 1-2+1-2=-2 →0・11の倍数でない | 「1212」は11の倍数でない (1212=11×110+2) |
509171905 | 5-0+9-1+7-1+9-0+5=33 →11の倍数 | 「509171905」は11の倍数 (509171905=11×46288355) |
それでは証明を見てみましょう。
【証明】(合同式)
任意の自然数 \(N\) は、数列 \(\{{a}_{n}\}\) を用いて、以下のように表せます。
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&10\cdot {a}_{1} \\
+&{10}^{2}\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&{10}^{n}\cdot {a}_{n}\quad・・・①
\end{alignat*}\]
なお、このとき、任意の \(k\ (0\leqq k\leqq n)\) に対して、\({a}_{k}\) は、\(0~9\) のいずれかの整数をとります。
ここで、\(10\equiv -1\pmod {11}\) より、\({10}^{k}\equiv {-1}^{k}\pmod {11}\) であることに注意すると、①式から以下の関係を得られます。
\[N\equiv\sum^{n}_{k=0}{(-1)}^{k}\cdot{a}_{k}\pmod {11}\quad・・・②\]
したがって、自然数 \(N\) が \(11\) で割り切れるのは、②式の右辺 \(\equiv 0\pmod {11}\) の場合となります。
そして、右辺は、
\[{a}_{0} + (-{a}_{1}) + {a}_{2} + (-{a}_{3}) + {a}_{4} + ・・・\]
と、各桁の数を、1桁目から \(+\) と \(-\) を交互に足し合わせた数であることから、与えられた以下の命題は示されました。
自然数 \(N\) の1桁目から、足す→引く→足す→引く→・・・と繰り返して、その結果が0か11の倍数の場合に、11の倍数となる。
(証明終了)
こちらも、上記の証明より、命題の「裏」が成立することも明らかです。
【命題の「裏」】
1桁目から、足す→引く→足す→引く→・・・と繰り返して、その結果が0か11の倍数でない場合、11の倍数ではない
(別解)二項定理利用した証明
別解として、合同式を利用した証明を見てみたいと思います。
なお、二項定理が不安な方は、先にこちらのページで復習するようにしてください。
【証明】(二項定理)
\(11=10+1\) より、①式は、以下のように変形できます。
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&10\cdot {a}_{1} \\
+&{10}^{2}\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&{10}^{n}\cdot {a}_{n}\quad・・・①
\end{alignat*}\]
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&(11-1)\cdot {a}_{1} \\
+&{(11-1)}^{2}\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&{(11-1)}^{n}\cdot {a}_{n}\quad・・・②
\end{alignat*}\]
ここで、二項定理より、任意の \(k\ (1\leqq k\leqq n)\) に対して、\({(11-1)}^{k}\) は、\(11\) の倍数 \({N}_{k}\) を用いて以下のように書くことができます。
\[\begin{alignat*}{3}
{(11-1)}^{k}&=\sum^{k}_{l=0}{}_k \mathrm{C}_{l}\ {11}^{l}\cdot{(-1)}^{k-l} \\
&={}_k \mathrm{C}_{0}\ {11}^{0}\cdot{(-1)}^{k}+\sum^{k}_{l=1}{}_k \mathrm{C}_{l}\ {11}^{l}\cdot{(-1)}^{k-l} \\
&={(-1)}^{k}+\sum^{k}_{l=1}{}_k \mathrm{C}_{l}\ {11}^{l}\cdot{(-1)}^{k-l} \\
&={(-1)}^{k}+{N}_{k}
\end{alignat*}\]
この結果を②式に代入すると、
\[\begin{alignat*}{3}
N=\ \ &1\cdot {a}_{0} \\
+&\{{(-1)}^{1}+{N}_{1}\}\cdot {a}_{1} \\
+&\{{(-1)}^{2}+{N}_{2}\}\cdot {a}_{2} \\
+&・・・ \\
+&\{{(-1)}^{n}+{N}_{n}\}\cdot {a}_{n}
\end{alignat*}\]
したがって、\(11\) の倍数 \(N’\) を用いると、
\[{\small\begin{alignat*}{3}
N=({N}_{1}\cdot {a}_{1}&+{N}_{2}\cdot {a}_{2}+・・・+{N}_{n}\cdot {a}_{n}) \\
&+\{{a}_{0} + (-{a}_{1}) + {a}_{2} + (-{a}_{3}) + {a}_{4} + ・・・\} \\
=N’+\{{a}_{0}& + (-{a}_{1}) + {a}_{2} + (-{a}_{3}) + {a}_{4} + ・・・\}
\end{alignat*}}\]
と表せるため、以下の命題が示されました。
自然数 \(N\) の1桁目から、足す→引く→足す→引く→・・・と繰り返して、その結果が0か11の倍数の場合に、11の倍数となる。
(証明終了)
ちなみに、、、利用可能性が少々低めのため、今回は取り上げませんが、
\(11\) の場合の証明を応用すれば、\(101\) の倍数、\(1001\) の倍数、\(10001\) の倍数、、、のような、\({10}^{n}+1\)という形に対して、判定方法を与えることができます。
ぜひ、興味がある方は考えてみてください!
おわりに
今回は、倍数の判定法として、3・9・11の倍数の判定法を解説しました。
これらの判定法は知っているかどうかで、計算のスピードがかなり変わってきてしまうものです。特に、11の倍数などは、いちいち筆算を書いて、割って確かめるのは結構面倒だと思います。。
今回は、比較的試験に出やすく、知らないと周りに差をつけられてしまうかも・・・というものを厳選していますので、ぜひ、何度も読み返して、しっかりと自分のものにしてみてください!
また、各判定法における証明では、合同式や二項定理を利用した証明を考えました。
これらは、整数の性質として、ぜひとも理解しておきたい基本事項になりますので、少しでも不安が残る方は、ページ内の各リンクから再確認をお願いします。
ちなみに、今回は解説しませんでしたが、各判定方法は、数学的帰納法を用いても証明が可能です。
もしよければ、証明問題の練習として、検討してみてください!(リンク工事中)
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