自然数 \(a,b\) に対して、その最大公約数を \(g\),最小公倍数を \(l\) とすると、\(a=ga’,b=gb’\) を満たす、互いに素な自然数 \(a’,b’\) を用いて、
\[l=ga’b’\]
と表せる。
※\(a,b,g,l\) だけで表すと、
\[ab=gl\]
今回は、最小公倍数と最大公約数の関係を見ていきます。
【2つの自然数の積 \(ab\)】が【それらの最小公倍数と最大公約数の積 \(gl\) 】と等しい、という非常にきれいな形をしており、この関係式自体はご存じの方も多いはず。
ただ、「なぜこんなきれいな関係が成り立つのか?」と聞かれると、困ってしまう方も多いのではないでしょうか。
導入をつければ、共通テストで導出が出題されても全く不思議でない、今回のテーマ。
ぜひ、今回の解説を通じて、
- なぜ成立するのか、しっかりと理解できること
- 自力で証明できるようになること
を目指しましょう!それでは、さっそく、解説を見ていきます。
解説
証明の流れの確認
まずは、証明の流れを確認します。証明は以下の、2 STEPで行います。
【STEP 1 補題の証明】
求める関係式を導出する前に、事前準備として、以下の補題を証明します。
<補題>
任意の自然数 \(a,b\) に対して、各文字を以下のように定義した場合、自然数 \(a’,b’\) は互いに素となる。
- \(g\) : \(a,b\) の最大公約数
- \(a’,b’\) : \(a=ga’,b=gb’\) を満たす自然数
【STEP 2 求める関係式の導出】
STEP 1で得られた結果を利用して、以下の命題を証明します。
<命題>
自然数 \(a,b\) に対して、その最大公約数を \(g\),最小公倍数を \(l\) とすると、\(a=ga’,b=gb’\) を満たす、互いに素な自然数 \(a’,b’\) を用いて、
\[l=ga’b’\]
と表せる。
なお、最小公倍数と最大公約数の関係としては、\(a,b,g,l\) だけを用いて、\(ab=gl\) という表し方をする場合もあります。
こちらは、STEP 2の命題を証明できれば、簡単な式変形だけで確認できます。(今回の解説では、STEP 2の中で合わせて確認します)
STEP 1 補題の証明
まずは、以下の補題を証明します。
<補題>
任意の自然数 \(a,b\) に対して、各文字を以下のように定義した場合、自然数 \(a’,b’\) は互いに素となる。
- \(g\) : \(a,b\) の最大公約数
- \(a’,b’\) : \(a=ga’,b=gb’\) を満たす自然数
<証明>
自然数 \(a’,b’\) が互いに素ではない、と仮定して、矛盾を導くことで、背理法により証明します。
\(a’,b’\) が互いに素ではないと仮定すると、\(a’,b’\) は、
- \(2\) 以上の自然数 \(n\)
- 自然数 \({a}^{”},{b}^{”}\)
を用いて、以下のように表せます。(\(2\) 以上の共通因数 \(n\) を持つ)
\[a’=n{a}^{”},b’=n{b}^{”}\]
これを、与えられた式 \(a=ga’,b=gb’\) に代入すると、
\[\begin{alignat*}{3}
a&=ga’=g(n{a}^{”})=(gn){a}^{”} \\
b&=gb’=g(n{b}^{”})=(gn){b}^{”}
\end{alignat*}\]
ここで、\(n\) は \(n\geqq 2\) の自然数のため、\(gn\geqq 2g\) であることに注意すると、\(a,b\) は、共通因数 \(gn\ (\geqq 2g)\) を持つことがわかります。
一方で、\(g\) は自然数であり、\(2g\geqq g\)なので、
\(a,b\) が、共通因数 \(gn\ (\geqq 2g)\) を持つというのは、
\(a,b\) の最大公約数が、\(g\) であることに矛盾します。
したがって、上記の通り矛盾を導けたため、\(a’,b’\) は互いに素であることが証明されました。
(証明終了)
STEP 2 補題を利用した、命題の証明
続いて、STEP 1で得られた補題を利用して、以下の命題を証明していきます。
<命題>
自然数 \(a,b\) に対して、その最大公約数を \(g\),最小公倍数を \(l\) とすると、\(a=ga’,b=gb’\) を満たす、互いに素な自然数 \(a’,b’\) を用いて、
\[l=ga’b’\]
と表せる。
また、\(a,b,g,l\) だけで表すと、\(ab=gl\) と表せる。
<証明>
\(l\) は、自然数 \(a,b\) の最小公倍数なので、自然数 \(n,n\) を用いて、以下の2通りで表せます。
\[\begin{alignat*}{3}
l&=ma&\quad・・・① \\
l&=nb&・・・②
\end{alignat*}\]
そして、①の右辺=②の右辺なので、
\[\begin{alignat*}{3}
&ma=nb \\
\Leftrightarrow\ &m(ga’)=n(gb’) \\
\Leftrightarrow\ &ma’=nb’\quad(\therefore\ gは自然数)
\end{alignat*}\]
ここで、STEP 1で得られた補題を利用すると、\(a’,b’\) は互いに素なので、
\[m=b’,n=a’\]
となります。したがって、\(m=b’\) を①に代入すると、
\[l=ma=b’a=b'(ga’)=ga’b’\]
が得られました。
また、この両辺に \(g\) をかけると、
\[gl=g(ga’b’)=(ga’)(gb’)=ab\]
となり、\(a,b,g,l\) だけで表した場合の関係式 \(ab=gl\) も得られました。
(証明終了)
おわりに
お疲れさまでした!今回は、最小公倍数と最大公約数の関係を見てきました。
解説を見ていくと、
- STEP 1 補題の証明
- STEP 2 補題を利用した、命題の証明
という、比較的シンプルなステップを踏んで証明している、ということが理解いただけたのではないかと思います。
一方で、こんなシンプルな証明ながらも、
- 背理法
- 互いに素な数に対する操作
といった、整数問題の基本となる、重要な考え方がぎっしりと詰まった証明でした。
ぜひ、解説を復習いただき、整数問題の基礎をしっかりと身に着けていただければうれしいです!
自然数 \(a,b\) に対して、その最大公約数を \(g\),最小公倍数を \(l\) とすると、\(a=ga’,b=gb’\) を満たす、互いに素な自然数 \(a’,b’\) を用いて、
\[l=ga’b’\]
と表せる。
※\(a,b,g,l\) だけで表すと、
\[ab=gl\]
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