【定数係数と微分の関係】
微分と、定数 \(k\) は入替可能
\[\{kf(x)\}’=kf'(x)\]
【関数の和・差と微分の関係】
足し算・引き算をバラバラにできる
\[\{f(x)+g(x)\}’=f'(x)+g'(x)\]
(※)これらを1つにまとめると、
関数 \(f\),\(g\) と定数 \(k\),\(l\) に対し、
\[\{kf(x)+lg(x)\}’=kf'(x)+lg'(x)\]
と書けます。(線形性)
解説
定数係数と微分の関係
関数 \(f\) の微分の定義は、次の通りです。
\[f'(x)\stackrel{\mathrm{def}}{=} \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]
したがって、関数 \(f\) を \(k\) 倍した関数 \(kf\) の微分は、以下のように表せます。
\[\{kf(x)\}’=\lim_{h\to 0}\frac{\{kf(x+h)\}-\{kf(x)\}}{h}\]
この式を変形すると、
\[\begin{alignat*}{3}
\{kf(x)\}’&=\lim_{h\to 0}\frac{\{kf(x+h)\}-\{kf(x)\}}{h} \\
&=\lim_{h\to 0}\ k\cdot\biggr\{\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\biggr\} \\
&=k\cdot\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} \\
&=kf'(x)\qquad(\because 関数\ f\ の微分の定義)
\end{alignat*}\]
となり、定数係数と微分の関係が導けました。
関数の和・差と微分の関係
次に、複数の関数 \(f,g\) が足し算・引き算で結ばれている関数 \(\{f+g\}\) の微分を考えます。
こちらも微分の定義から、以下のように表せます。
\[\{f(x)+g(x)\}’=\lim_{h\to 0}\frac{\{f(x+h)+g(x+h)\}-\{f(x)+g(x)\}}{h}\]
この式を変形すると、
\[\begin{alignat*}{3}
\{f(x)+g(x)\}’&=\lim_{h\to 0}\frac{\{f(x+h)+g(x+h)\}-\{f(x)+g(x)\}}{h} \\
&=\lim_{h\to 0}\biggr\{\frac{f(x+h)-f(x)}{h}+\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\biggr\} \\
&=\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}+\lim_{h\to 0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h} \quad(※)\\
&=f'(x)+g'(x)\qquad(\because 関数\ f,g\ の微分の定義)
\end{alignat*}
\]
となり、複数の関数と微分の関係が導けました。
(※)\(\lim\) の中の足し算・引き算を分割するためには、本来は、分解した後の関数が、いずれも収束することを確認する必要があります。
ただし、今回の議論では、関数 \(f,g\) がいずれも微分可能である(=収束する)ことを前提にしているため、ここでは当然に分割可能なものとして扱っています。
(補足)2つの関係を、1つにまとめる
上で得られた2つの関係ですが、他の教科もあるし、なるべく覚えることを少なくしたいところ・・・
そこで、2つの関係を、1つにまとめることを考えます。
関数 \(f\),\(g\) と定数 \(k\),\(l\) に対し、
\[\{kf(x)+lg(x)\}’\]
を式変形すると、
\[\begin{alignat*}{3}
\{kf(x)+lg(x)\}’&=\{kf(x)\}’+\{lg(x)\}’\quad&&(\because 2つ目の関係「関数の和・差と微分の関係」より) \\
&=kf'(x)+lg'(x)&&(\because 1つ目の関係「定数係数と微分の関係」より)
\end{alignat*}\]
となり、1つの式にまとめることができました。この式から、微分の計算をするときは、
- 定数倍は微分の外に出せる
- 足し算・引き算を、バラバラにできる
ということがわかりました。(難しい言葉で、このような性質を 線形性がある といいます)
おわりに
今回は、定数係数と微分の関係・関数の和差と微分の関係を解説しました。
これらの関係については、受験数学の中では、式変形を行う中で、当然に出てくるものとなります。
ぜひ、理解できるまで何度もこのページを読み返して、脊髄反射で式変形ができるように練習してみてください!
ちなみに、補足として記載した「線形性」ですが、少し慣れている人であれば、どちらも当たり前じゃない?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、実は、この線形性は当たり前に成り立つものではありません。
例えば、\(f(x)={x}^{2}\) という関数 \(f\) を考えると、
1つ目の関係(定数を外に出せる)は、
\[\begin{alignat*}{3}
f(ax)&={(ax)}^{2}={a}^{2}\cdot{x}^{2} \\
&\ne a\cdot{x}^{2}=a\cdot f(x)
\end{alignat*}\]
2つ目の関係(足し算・引き算をバラバラにできる)は、
\[\begin{alignat*}{3}
f(x+y)&={(x+y)}^{2}={x}^{2}+2xy+{y}^{2} \\
&\ne{x}^{2}+{y}^{2}=f(x)+f(y)
\end{alignat*}\]
となり、線形性の2つの関係は、いずれも満たさないことがわかります。
線形性については、このページの趣旨を大きく飛び出してしまうため、こちらでの詳しい解説は省略しますが、興味がある方は、ぜひコメントよりご連絡いただけると嬉しいです!
解説ページを作成するようにします。
【定数係数と微分の関係】
微分と、定数 \(k\) は入替可能
\[\{kf(x)\}’=kf'(x)\]
【関数の和・差と微分の関係】
足し算・引き算をバラバラにできる
\[\{f(x)+g(x)\}’=f'(x)+g'(x)\]
(※)これらを1つにまとめると、
関数 \(f\),\(g\) と定数 \(k\),\(l\) に対し、
\[\{kf(x)+lg(x)\}’=kf'(x)+lg'(x)\]
と書けます。(線形性)
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