【1次不定方程式 \(ax+by=c\) の求め方】
<\(a\) と \(b\) が互いに素な場合>
- 直感や、ユークリッドの互除法など、どんな方法でも構わないので、与えられた1次不定方程式を満たす解 \(({x}_{0},{y}_{0})\)を、1つ見つける
- 与えられた1次不定方程式から、1. の解を引き算し、\(a(x-{x}_{0})+b(y-{y}_{0})=0\) の形にする
- \(a\) と \(b\) が互いに素であることから、整数 \(n\) を用いて、\(x-{x}_{0}=-bn\) とできる
- 3.の結果を用いて変形すると、\((x,\)\(y)=(\)\({x}_{0}-bn,\)\({y}_{0}+an)\) と求められる
<\(a\) と \(b\) が2以上の最大公約数 \(g\) を持つ場合>
- 与えられた式が整数解をもつ場合、\((a’g)x+(b’g)y=(c’g)\) のような形をしているため、両辺を \(g\ (\ne 0)\) で割る
- 1.で得られた、\(a’x+b’y=c’\) という方程式において、\(a’\) と \(b’\) は互いに素なので、<\(a\) と \(b\) が互いに素な場合>の手順で解を求める
今回は、1次不定方程式の整数解の求め方について解説していきます。
この「1次不定方程式の整数解の求め方」は、発想力が試されるというよりは、共通テストなど、計算メインで出題されることが多いものと思います。
ただ、解き方を知らないと、初見ではなかなか太刀打ちができないものでもあります。
ぜひ、今回の解説を通じて、1次不定方程式については完ペキにしていきましょう!
解説
\(a\) と \(b\) が互いに素な場合
それでは、例題を通して、解き方を確認していきましょう。
例題① \(2x+7y=3\)
4STEPで解いていきます。
STEP 1 なんでもいいので、解を1つ見つける
1. 直感や、ユークリッドの互除法など、どんな方法でも構わないので、与えられた1次不定方程式を満たす解 \(({x}_{0},{y}_{0})\)を、1つ見つける
まずは、STEP1として、1次不等式を満たす解を、何でもいいので、とにかく1つ見つけます。
そこで、例えば、\((x,\)\(y)=(\)\(-2,\)\(1)\) としてみると、
\[左辺=2\cdot(-2)+7\cdot 1=3=右辺\]
となり、\((x,\)\(y)=(\)\(-2,\)\(1)\) は、方程式の解の1つであることがわかりました。
※とにかく解を見つけろ、と言われてもどうしたらいいかわからない!という方は、機械的に見つける方法として、「ユークリッドの互除法」を利用することができます。こちらの方法は、次の例題で紹介します。
STEP 2 \(a(x-{x}_{0})+b(y-{y}_{0})=0\) の形を作る
2. 与えられた1次不定方程式から、1. の解を引き算し、\(a(x-{x}_{0})+b(y-{y}_{0})=0\) の形にする
先ほど得られた、\((x,\)\(y)=(\)\(-2,\)\(1)\) という解を、方程式に代入すると、
\[2\cdot(-2)+7\cdot 1=3\]
となります。これを、方程式 \(2x+7y=3\) から両辺引き算すると、
\[(2x+7y)-\{2\cdot(-2)+7\cdot 1\}=3-3\]
\[\therefore\ 2(x+2)+7(y-1)=0\]
となり、求める形が得られました。
STEP 3 互いに素であることを利用して、解を求める
3. \(a\) と \(b\) が互いに素であることから、整数 \(n\) を用いて、\(x-{x}_{0}=-bn\) とできる
次に、STEP2の結果より、
\[2(x+2)=-7(y-1)\]
となります。
今、両辺の係数 \(2\) と \(7\) は互いに素なので \(x+2\) は、必ず、\(7\) の倍数です。
したがって、整数 \(n\) を用いて、\(x+2=-7n\) とできます。
この部分が、この1次不等式の解法において最大のポイントです!
この点、若干理解が難しい部分かと思うので、簡単に整理してみます。
- Qなぜ、\(x+2\) は、必ず、\(7\) の倍数と言えるのか?
- A
もし、 \(x+2\) が \(7\) の倍数ではないとすると、
- 左辺 \(=2(x+2)\):\(7\) の倍数ではない
- 右辺 \(=-7(y-1)\):\(7\) の倍数である
となり、左辺と右辺でイコールが成り立たなくなってしまいます。
そのため、\(x+2\) は \(7\) の倍数とわかります。
(ここで使っている理屈が、いわゆる「互いに素」です)
- Qそれなら、「\(7\) の倍数」ではなく、「\(x+2=7\)」としてもいいのでは?
- A
\(y\) は整数全体をとることから、\(y-1\) も整数全体をとります。そのため、右辺は、ありとあらゆる \(7\) の倍数になりえます。
例えば、以下のような感じです。
- \(y=3\) を入れてみると、\({\small -7(y-1)=-7\times 2=-14}\)
- \(y=-5\) を入れてみると、\({\small -7(y-1)=-7\times (-6)=42}\)
- \(y=-20000\) を入れてみると、\({\small -7(y-1)=-7\times (-19999)=139993}\)
この、「ありとあらゆる \(7\) の倍数」を全て表現するには、単に「\(x+2=7\)」とするだけでは網羅しきれず、整数 \(n\) を用いて、
\[x+2=-7(y-1)=-7n\]
と表す必要があります。
STEP 4 得られた解をキレイにして完了!
4. 3.の結果を用いて変形すると、\((x,\)\(y)=(\)\({x}_{0}-bn,\)\({y}_{0}+an)\) と求められる
ここまでくれば、あと一息です!
STEP 3で得られた、\(x+2=-7n\) より、\(x=-7n-2\) となります。
また、\(x+2=-7n\) を \(2(x+2)=-7(y-1)\) に代入して、
\[\begin{alignat*}{3}
&{-7(y-1)}=2(x+2) \\
\Leftrightarrow\ &{-7(y-1)}=2\cdot(-7n) \\
\Leftrightarrow\ &y-1=2\cdot n
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ y=2n+1\]
したがって、
\[(x,y)=(-7n-2,2n+1)\ (n\ は整数)\]
と、1次不定方程式を解くことができました!
例題② \(2025x+1736y=1\)
続いて、いかにも難しそうな、こちらの1不定方程式を解いていきます。
こちらの方程式ですが、見た目は難しそうなものの、例題①で見たSTEP 1~4の通り解き進めてみれば、全く大したことはありません。
STEP 1~4の振り返りと思って、ぜひ、手を動かしてみましょう!
1. 直感や、ユークリッドの互除法など、どんな方法でも構わないので、与えられた1次不定方程式を満たす解 \(({x}_{0},{y}_{0})\)を、1つ見つける
まずはSTEP 1で、1つでいいので、与えられた方程式を満たすような解を見つけます。
、、、が、あまりにも値が大きく、直感的に見つけるのは難しそうです。。。
そこで、ここでは、「ユークリッドの互除法による解の見つけ方」をご紹介します。
なお、ユークリッドの互除法については、こちらのページで解説していますので、まだ学習されていない方は、こちらを先にご覧ください。
係数の \(2025\) と \(1736\) に、ユークリッドの互除法を適用すると、以下のようになります。
\[\begin{alignat*}{3}
2025&=1736\times 1+289 \\
1736&=289\times 6+2 \\
289&=2\times 144+1
\end{alignat*}\]
各式を、「余り=」の形にすると、
\[\begin{alignat*}{3}
\textcolor{#00B0F0}{289}&&\ \textcolor{#00B0F0}{=}&\ \textcolor{#00B0F0}{2025-1736\times 1}\quad&・・・① \\
\textcolor{#FF0000}{2}&&\ \textcolor{#FF0000}{=}&\ \textcolor{#FF0000}{1736-289\times 6}&・・・② \\
1&&\ =&\ 289-2\times 144&・・・③
\end{alignat*}\]
これを③→②→①と遡る形で変形していきます。
\[\begin{alignat*}{3}
&1=289-\textcolor{#FF0000}{2}\times 144・・・③ \\
\Leftrightarrow\ &{\small 1=289-(\textcolor{#FF0000}{1736-289\times 6})\times 144}\quad(\because\ ②) \\
\Leftrightarrow\ &1=289+864\times 289-144\times 1736 \\
\Leftrightarrow\ &1=865\times \textcolor{#00B0F0}{289}-144\times 1736 \\
\Leftrightarrow\ &{\small 1=865\times (\textcolor{#00B0F0}{2025-1736\times 1})-144\times 1736}\quad(\because\ ①) \\
\Leftrightarrow\ &{\small 1=865\times 2025-865\times 1736-144\times 1736} \\
\Leftrightarrow\ &1=865\times 2025-1009\times 1736 \\
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ 2025\cdot 865+1736\cdot (-1009)=1\]
したがって、1次不定方程式 \(2025x+1736y=1\) の解の1つとして、\((x,\)\(y)=(\)\(865,\)\({-1009})\) を求めることができました。
※実際に計算してみると、以下のようになり、確かに成り立っていることがわかります。
\[\begin{alignat*}{3}
左辺&=2025\cdot 865+1736\cdot (-1009) \\
&=1751625-1751624 \\
&=1=右辺
\end{alignat*}\]
2. 与えられた1次不定方程式から、1. の解を引き算し、\(a(x-{x}_{0})+b(y-{y}_{0})=0\) の形にする
先ほど得られた、\((x,\)\(y)=(\)\(865,\)\(-1009)\) という解を、方程式に代入すると、
\[2025\cdot 865+1736\cdot (-1009)=1\]
となります。これを、方程式 \(2025x+1736y=1\) から両辺引き算すると、
\[{\small(2025x+1736y)-\{2025\cdot 865+1736\cdot (-1009)\}=1-1}\]
\[\therefore\ 2025(x-865)+1736(y+1009)=0\]
となり、求める形が得られました。
3. \(a\) と \(b\) が互いに素であることから、整数 \(n\) を用いて、\(x-{x}_{0}=-bn\) とできる
次に、STEP2の結果より、
\[2025(x-865)=-1736(y+1009)\]
となります。両辺の係数 \(2025\) と \(1736\) は、
- \(2025={3}^{4}\cdot{5}^{2}\)
- \(1736={2}^{3}\cdot 7\cdot 31\)
と素因数分解することができ、互いに素なので \(x-865\) は、必ず、\(1736\) の倍数です。
したがって、整数 \(n\) を用いて、\(x-865=-1736n\) とできます。
4. 3.の結果を用いて変形すると、\((x,\)\(y)=(\)\({x}_{0}-bn,\)\({y}_{0}+an)\) と求められる
STEP 3で得られた、\(x-865=-1736n\) より、\(x=-1736n+865\) となります。
また、\(x-865=-1736n\) を \(2025(x-865)=-1736(y+1009)\) に代入して、
\[\begin{alignat*}{3}
&{-1736(y+1009)}=2025(x-865) \\
\Leftrightarrow\ &{-1736(y+1009)}=2025\cdot(-1736n) \\
\Leftrightarrow\ &y+1009=2025\cdot n
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ y=2025n-1009\]
したがって、
\[{\small(x,y)=(-1736n+865,2025n-1009)\ (n\ は整数)}\]
と、1次不定方程式を解くことができました!
\(a\) と \(b\) が2以上の最大公約数 \(g\) を持つ場合
続いて、\(x,y\) の係数 \(a\) と \(b\) が、2以上の最大公約数 \(g\) を持つ場合を考えます。
とは言っても、ほとんど、前の章で見た、「\(a\) と \(b\) が互いに素な場合」と同じで、計算の前に、若干操作が増えるだけになりますので、ご安心ください!
例題③ \(4x+6y=12\)
1. 与えられた式が整数解をもつ場合、\((a’g)x+(b’g)y=(c’g)\) のような形をしているため、両辺を \(g\ (\ne 0)\) で割る
両辺を \(4\) と \(6\) の最大公約数 \(2\) で割り算します。
すると、\(2x+3y=6\) となります。
2. 1.で得られた、\(a’x+b’y=c’\) という方程式において、\(a’\) と \(b’\) は互いに素なので、<\(a\) と \(b\) が互いに素な場合>の手順で解を求める
あとは、\(a’\) と \(b’\) は互いに素であることに注意すると、前の章で見た、「\(a\) と \(b\) が互いに素な場合」と全く同じです。具体的には、
- STEP 1 なんでもいいので、解を1つ見つける
- STEP 2 \(a'(x-{x}_{0})+b'(y-{y}_{0})=0\) の形を作る
- STEP 3 互いに素であることを利用して、解を求める
- STEP 4 得られた解をキレイにして完了!
の4STEPを行うことで、1次不定方程式の整数解を得られます。(解答は割愛しますので、ぜひご自身の手で解いてみましょう!)
なお、今回は、右辺の \(c\) が、\(a\) と \(b\) の最大公約数 \(g\) を約数に持つことを前提に解説しました。
というのも、\(a\) と \(b\) の最大公約数 \(g\) を約数に持たない場合、方程式 \(ax+by=c\) は整数解を持ちません。
そのため、このような場合は出題されないと思われ、気にする必要ありません。
ちなみに、このような場合に整数解を持たないことについては、こちらのページで証明していますので、興味がある方はご覧ください。
おわりに
お疲れさまでした!今回は、1次不定方程式の整数解の求め方について解説しました。
慣れれば全然難しくないものの、初見だと少し考えてしまう、という、事前準備がものをいう分野になりますので、ぜひ、ご自身の手を動かして、解答の感覚をつかんでいただければうれしいです!
ちなみに、非常にどうでもいいことなのですが、、、
こちらの1次不定方程式の整数解を求める問題は、出題する側の先生からすると、採点にかなりの手間がかかってしまう、学校の先生泣かせの問題だったりします。
というのも、STEP 1で具体的な解を見つけましたが、最終的な不定方程式を満たすものであれば、何でもよく、パターンは(、理論上)、無限に存在します。
さらに、STEP 3において、今回の解説では、\(x-{x}_{0}=-bn\) と必ず表すようにしましたが、\(x-{x}_{0}=+bn\) と正負を反対にしても成り立ってしまいます。
、、、というわけで、正解のパターンが無数に存在してしまい、採点するのも一苦労、となってしまうわけです。
このような、出題者側の都合から、高校の定期テストなどでは、誘導により、答えの表し方限定されるような工夫がされることもあるようです。
【1次不定方程式 \(ax+by=c\) の求め方】
<\(a\) と \(b\) が互いに素な場合>
- 直感や、ユークリッドの互除法など、どんな方法でも構わないので、与えられた1次不定方程式を満たす解 \(({x}_{0},{y}_{0})\)を、1つ見つける
- 与えられた1次不定方程式から、1. の解を引き算し、\(a(x-{x}_{0})+b(y-{y}_{0})=0\) の形にする
- \(a\) と \(b\) が互いに素であることから、整数 \(n\) を用いて、\(x-{x}_{0}=-bn\) とできる
- 3.の結果を用いて変形すると、\((x,\)\(y)=(\)\({x}_{0}-bn,\)\({y}_{0}+an)\) と求められる
<\(a\) と \(b\) が2以上の最大公約数 \(g\) を持つ場合>
- 与えられた式が整数解をもつ場合、\((a’g)x+(b’g)y=(c’g)\) のような形をしているため、両辺を \(g\ (\ne 0)\) で割る
- 1.で得られた、\(a’x+b’y=c’\) という方程式において、\(a’\) と \(b’\) は互いに素なので、<\(a\) と \(b\) が互いに素な場合>の手順で解を求める
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