3変数・3乗の基本公式

【3変数・3乗の基本公式】

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc \\
&\ {\small=(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)}
\end{alignat*}\]

今回は、こちらの基本公式を確認します。

証明は非常に簡単で、しかも使う場面も非常に多いのですが(特に2次試験)、教科書には載っておらず、しっかりと覚えられてない方が結構いらっしゃると思います。

こちらの公式を使えば、後半でご紹介する、文字が3つの場合の相加平均と相乗平均の関係も比較的すんなり導出できます。

最後には、暗記が苦手な私でも覚えられた、公式の覚え方(簡単4STEP)もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

解説

公式の導出

まずは、サクッと公式を導出していきましょう。

【3変数・3乗の基本公式】

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc \\
&\ {\small=(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)}
\end{alignat*}\]

<証明>
右辺を展開すると、

\[\begin{alignat*}{3}
&(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca) \\
&=a({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca) \\
&\quad+b({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca) \\
&\quad+c({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca) \\
&={a}^{3}+\textcolor{#FF0000}{a{b}^{2}}+\textcolor{#00B0F0}{{c}^{2}a}-\textcolor{#FF66CC}{{a}^{2}b}-abc-\textcolor{#00FFFF}{c{a}^{2}} \\
&\quad+\textcolor{#FF66CC}{{a}^{2}b}+{b}^{3}+\textcolor{#B0EE00}{b{c}^{2}}-\textcolor{#FF0000}{a{b}^{2}}-\textcolor{#00CC00}{{b}^{2}c}-abc \\
&\quad+\textcolor{#00FFFF}{c{a}^{2}}+\textcolor{#00CC00}{{b}^{2}c}+{c}^{3}-abc-\textcolor{#B0EE00}{b{c}^{2}}-\textcolor{#00B0F0}{{c}^{2}a} \\
&\stackrel{\mathrm{(※)}}{=}{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc
\end{alignat*}\]

(※)色を付けた項について、同じ色の項が、プラスとマイナスで、ちょうど打ち消し合うことから、\({a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc\) だけが残ります

(証明終了)

(発展)相加平均と相乗平均の関係の導出(文字が3つの場合)

続いて、先ほど導出した公式を利用して、文字が3つの場合の相加平均と相乗平均の関係を導出してみましょう。

【(発展)相加平均と相乗平均の関係(文字が3つの場合)】
\(x,y,z>0\) に対して、

\[\frac{x+y+z}{3}\geqq\sqrt[3]{xyz}\]

(等号成立は \(x=y=z\) のとき)

<証明>
先ほど導出した、

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc \\
&\ {\small=(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)}
\end{alignat*}\]

という等式(以下、基本公式)で、右辺の変形を考えます。

\[\begin{alignat*}{3}
&(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca) \\
&=(a+b+c) \\
&\qquad\times\Bigl\{\frac{1}{2}({a}^{2}-2ab+{b}^{2}) \\
&\qquad\quad+\frac{1}{2}({b}^{2}-2bc+{c}^{2}) \\
&\qquad\quad\quad+\frac{1}{2}({c}^{2}-2ca+{a}^{2})\Bigr\} \\
&=(a+b+c) \\
&\qquad\times\frac{1}{2}\Bigl\{{(a-b)}^{2}+{(b-c)}^{2}+{(c-a)}^{2}\Bigr\}・・・①
\end{alignat*}\]

ここで、\(x,y,z>0\) に対して、\(a=\sqrt[3]{x},\) \(b=\sqrt[3]{y},\) \(c=\sqrt[3]{z}\) とおくと、①は、

  • \(\sqrt[3]{x}+\sqrt[3]{y}+\sqrt[3]{z}\)
  • \(\frac{1}{2}\Bigl\{{(a-b)}^{2}+{(b-c)}^{2}+{(c-a)}^{2}\Bigr\}\)

2つの項の積になります。これらの2つの項は、

  • 1つ目の項は、\(x,y,z>0\) から、正の数の和であるため正
  • 2つ目の項は、2乗の和なので \(0\) 以上

であることから、①は、全体として \(0\) 以上であることがわかります。(※)

①は、基本公式の右辺だったので、基本公式に、\(a=\sqrt[3]{x},\) \(b=\sqrt[3]{y},\) \(c=\sqrt[3]{z}\) を代入すると、

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc \\
&\ {\small=(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)} \\
\Leftrightarrow\ &{(\sqrt[3]{x})}^{3}+{(\sqrt[3]{y})}^{3}+{(\sqrt[3]{z})}^{3}-3\sqrt[3]{x}\sqrt[3]{y}\sqrt[3]{z} \\
&\ \geqq 0\ (\because\ (※))
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ \frac{x+y+z}{3}\geqq\sqrt[3]{xyz}\]

等号成立は、①\(=0\) のときなので、

\[a-b=0\ かつ\ b-c=0\ かつ\ c-a=0\]

\[\therefore\ a=b=c\]

\[\Leftrightarrow\ \sqrt[3]{x}=\sqrt[3]{y}=\sqrt[3]{z}\]

\[\Leftrightarrow\ x=y=z\]

したがって、求める関係が得られました。

(証明終了)

(Appendix)公式の覚え方(簡単4STEP)

こちらの公式は非常に強力な武器になるのですが、少々覚えづらいのがネックです。

そこで、ここでは、私がどうやって覚えているのかご紹介してみたいと思います。

多少、ゴリ押しの部分はあるものの、簡単4STEPを踏めば、ほぼほぼ正しい公式を思い出せるようになるかと思いますので、もしよろしければ参考にしてみて下さい。

【STEP 1】
みんなが良く知っている、こちらの公式を思い浮かべる

\[{a}^{3}+{b}^{3}=(a+b)({a}^{2}-ab+{b}^{2})\]

【STEP 2】
項の順番を入れ替える

\[\begin{alignat*}{3}
{a}^{3}+{b}^{3}&=(a+b)({a}^{2}-ab+{b}^{2}) \\
&=(a+b)({a}^{2}+{b}^{2}-ab)
\end{alignat*}\]

【STEP 3】
この公式に \(c\) を付け加えたい!という気持ちで、いじってみる
(このときのポイントは、対称性を意識することです)

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3} \\
&\stackrel{\mathrm{???}}{=}(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)
\end{alignat*}\]

【STEP 4】
等式として成立させるため、最後の微調整
(このときのポイントは、3変数・3乗なので、係数も3が自然、ということです)

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}\textcolor{#FF0000}{-3abc} \\
&=(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)
\end{alignat*}\]

おわりに

お疲れさまでした!今回は、3変数の3乗の基本公式を解説しました。

この公式が最も威力を発揮するのは、因数分解のときです。

特に、整数問題で、因数分解型に持ち込む必要があるような場合、この公式を知っているかいないかで、大問が丸ごと解けるか解けないかを左右してしまうほど、入試においては非常に重要なものになります。

(自力で導出できないことはないものの、試験時間中に気づくのは、なかなか難しいと思われます。。。)

ぜひ、最後にご紹介した、公式の覚え方(簡単4STEP)なども利用して、こちらの公式を自分のものにしていただけるとうれしいです。

【3変数・3乗の基本公式】

\[\begin{alignat*}{3}
&{a}^{3}+{b}^{3}+{c}^{3}-3abc \\
&\ {\small=(a+b+c)({a}^{2}+{b}^{2}+{c}^{2}-ab-bc-ca)}
\end{alignat*}\]

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