【整式の割り算】重解型の余りの求め方(①次数下げ)

【次数下げによる、重解型の余りの求め方】

  1. 整式 \(P(x)\) を \({(x-\alpha)}^{2}\) で割り算した余りを \(ax-b\) と置く
  2. \(\alpha\) を代入し、\(b=(a\) の式\()\) の形にして、整式 \(P(x)\) から \(b\) を消去する
  3. 改めて、整式 \(P(x)\) を \((x-\alpha)\) で因数分解し、「\(=0\)」の形を作る
  4. \((x-\alpha)\) でない方の因数に、\(x=\alpha\) を代入し、\(a\) を求める
  5. \(a\) から \(b\) を求めることで、余りが求められる
  6. 最後に、\(x=\alpha\) の場合にも、等式を満たすことを確認して完了

今回は、整式の割り算における余りの求め方として、割る式に2乗を含む形(重解型)の場合を見ていきます。

難関大学の入試問題では時々出題されることもあるようですが、私自身、高校の数学の授業で、こちらの解法を学んだ記憶がなく、今回はブログにしてみました。

整式を \(n\) 次式で割り算する場合、余りの次数が高々 \(n-1\) 次になることから、以下の方針で求めるのが基本路線となります。

  • 余りを \({r}_{n-1}\cdot {x}^{n-1}\ \)\(+{r}_{n-2}\cdot {x}^{n-2}\ \)\(+・・・\ \)\(+{r}_{1}\cdot x\ \)\(+{r}_{0}\) と置く
  • 割る式 \((x-{\alpha}_{1})\)\((x-{\alpha}_{2})\)\(・・・\)\((x-{\alpha}_{n})\) の \({\alpha}_{1},\ \)\({\alpha}_{2},\ \)\(・・・,\ \)\({\alpha}_{n}\) を順次、代入する
  • 代入により得られた、\(n\) 元一次連立方程式を解くことで、\({r}_{k}\ (0\leqq k\leqq n-1)\) を計算し、余りを求める

しかし、割る式に2乗を含む場合、得られる方程式が1つ少なくなってしまい、未知数 \({r}_{k}\) を一意に定めることができません。

そこで、今回ご紹介する、次数下げという方法が役に立ってきます。

ぜひ、今回の解説を通じて、割る式に2乗を含む形でも、自信をもって、余りを求められるようになりましょう!

ちなみに、「次数下げ」という呼び方は、こちらのブログ限定のものになります。
学校などでは通じない可能性がありますので、ご了承ください。。。

解説

割られる式が3次式の場合

それでは、こちらの例題を見ていきましょう。

<例題>
\({x}^{3}\) を \({(x-2)}^{2}\) で割った余りを求めよ

<解答>
整式を \(x\) の2次式で割った余りは、高々1次式なので、求める余りは \(ax+b\) と置くことができます。

したがって、商を \(Q(x)\) と置くと、

\[{x}^{3}={(x-2)}^{2}Q(x)+ax+b・・・①\]

この両辺に、\(x=2\) を代入すると、

\[{2}^{3}={(2-2)}^{2}Q(2)+a\cdot 2+b\]

\[\therefore\ b={2}^{3}-2a・・・②\]

(ここからが、次数下げの方法の特徴的な部分です!)

これを①に代入して、

\[\begin{alignat*}{3}
&{x}^{3}={(x-2)}^{2}Q(x)+ax+({2}^{3}-2a) \\
\Leftrightarrow\ &{x}^{3}-{2}^{3}-{(x-2)}^{2}Q(x)-ax+2a=0 \\
\stackrel{\mathrm{(※)}}{\Leftrightarrow}\ &(x-2)({x}^{2}+2x+{2}^{2}) \\
&\quad-{(x-2)}^{2}Q(x)-a(x-2)=0 \\
\Leftrightarrow\ &(x-2) \\
&\quad\times{\small\{({x}^{2}+2x+4)-(x-2)Q(x)-a\}=0} \\
\end{alignat*}\]

(※)こちらは、\({p}^{3}-{q}^{3}=(p-q)({p}^{2}+pq+{q}^{2})\) という変形を使っています

したがって、

  • \(x=2\)・・・③
  • \({\small({x}^{2}+2x+4)-(x-2)Q(x)-a=0}\)・・・④

④の両辺に、\(x=2\) を代入すると、

\[({2}^{2}+2\cdot 2+4)-(2-2)Q(2)-a=0\]

\[\therefore\ a=12\]

また、②より、\(b={2}^{3}-2a=8-2\cdot 12=-16\)

よって、④から、余りは \(12x-16\) と求められました。

一方で、\({x}^{3}={(x-2)}^{2}Q(x)+12x-16\) の両辺に、\(x=2\ (③)\) を代入すると、

  • 左辺=\({2}^{3}=8\)
  • 右辺=\({(2-2)}^{2}Q(2)+12\cdot 2-16=8\)

となり、左辺=右辺となるため、\(x=2\) の場合も等式を満たすことがわかります。

したがって、余りは、\(12x-16\) と求めることができました。

ここで少し振り返ってみましょう。

割る式が重解型の場合、【未知数2つに対し、関係式が1つ】しか得られず、通常のやり方では解けないのでした。

こちらの解法では、\({p}^{3}-{q}^{3}=(p-q)({p}^{2}+pq+{q}^{2})\) という変形により、うまく \((x-2)\)で割り算し、次数を下げることによって、【未知数を1つに対し、関係式が1つ】という状態を作りました。

この次数下げを使えば、割られる式が何次式でも、同様に【未知数を1つに対し、関係式が1つ】という状態を作り、余りを求めることができます!

次の章では、割られる式が \(n\) 次の場合を見ていきましょう!

\({p}^{3}-{q}^{3}=(p-q)({p}^{2}+pq+{q}^{2})\) という変形で、うまく割り算し、次数を下げることにより、重解型でも余りを求められる!

割られる式が \(n\) 次式の場合

<例題>
\({x}^{n}\) を \({(x-2)}^{2}\) で割った余りを求めよ

<解答>
割られる式が \({x}^{n}\) のときと同様、余りは \(ax+b\) と置くことができ、商 \(Q(x)\) を用いて、

\[{x}^{n}={(x-2)}^{2}Q(x)+ax+b・・・①\]

と書くことができます。この両辺に、\(x=2\) を代入すると、

\[{2}^{n}={(2-2)}^{2}Q(2)+a\cdot 2+b\]

\[\therefore\ b={2}^{n}-2a・・・②\]

これを①に代入して、

\[\begin{alignat*}{3}
&{x}^{n}={(x-2)}^{2}Q(x)+ax+({2}^{n}-2a) \\
\Leftrightarrow\ &{x}^{n}-{2}^{n}-{(x-2)}^{2}Q(x)-ax+2a=0 \\
\stackrel{\mathrm{(※)}}{\Leftrightarrow}\ &{\small(x-2)({x}^{n-1}+{x}^{n-2}\cdot 2+・・・+x\cdot {2}^{n-2}+{2}^{n-1})} \\
&\quad{\small-{(x-2)}^{2}Q(x)-a(x-2)=0} \\
\Leftrightarrow\ &(x-2) \\
&\quad\times{\small\{({x}^{n-1}+{x}^{n-2}\cdot 2+・・・+x\cdot {2}^{n-2}+{2}^{n-1})} \\
&\qquad\qquad{\small-(x-2)Q(x)-a\}=0} \\
\end{alignat*}\]

(※)こちらは、\({p}^{n}-{q}^{n}\)\(=(p-q)({p}^{n-1}\)\(+{p}^{n-2}q\)\(+・・・\)\(+p{q}^{n-2}\)\(+{q}^{n-1})\) という変形を使っています

したがって、

  • \(x=2\)・・・③
  • \({\small({x}^{n-1}}\)\({\small+{x}^{n-2}\cdot 2}\)\({\small+・・・}\)\({\small+x\cdot {2}^{n-2}}\)\({\small+{2}^{n-1})}\)\({\small-(x-2)Q(x)}\)\({\small-a}\)\({\small=0}\)・・・④

④の両辺に、\(x=2\) を代入すると、

\[\begin{alignat*}{3}
({\small{2}^{n-1}+{2}^{n-2}\cdot 2+・・・+2\cdot {2}^{n-2}+{2}^{n-1}}&) \\
\quad{\small-(2-2)Q(2)-a}&=0
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ a=n\cdot {2}^{n-1}\]

また、②より、\(b={2}^{n}-2a\ \)\(={2}^{n}\)\(-2\cdot n\cdot {2}^{n-1}\ \)\(=-(n-1)\cdot {2}^{n}\)

よって、④から、余りは \(n\cdot {2}^{n-1}x-(n-1)\cdot {2}^{n}\) と求められました。

一方で、\({x}^{n}={(x-2)}^{2}Q(x)\)\(+n\cdot {2}^{n-1}x\)\(-(n-1)\cdot {2}^{n}\) の両辺に、\(x=2\ (③)\) を代入すると、

  • 左辺=\({2}^{n}\)
  • 右辺=\({(2-2)}^{2}Q(2)+n\cdot {2}^{n-1}\cdot 2\)\(-(n-1)\cdot {2}^{n}\ \)\(={2}^{n}\)

となり、左辺=右辺となるため、\(x=2\) の場合も等式を満たすことがわかります。

したがって、余りは、\(n\cdot {2}^{n-1}x-(n-1)\cdot {2}^{n}\) と求めることができました。

ちなみに、\(n=3\) を代入すると、

\[3\cdot {2}^{3-1}x-(3-1)\cdot {2}^{3}=12x-16\]

となり、前の章で見た結果と一致することがわかります。

(応用)割る式が \((x-\alpha){(x-\beta)}^{2}\) の場合

割る式が \((x-\alpha){(x-\beta)}^{2}\) という形をしている場合も、【未知数3つに対し、関係式2つ】しか得られず、単純な連立方程式としては解くことができません。

、、、が、実は、こちらも次数下げにより解くことができます。

計算が少々大変にはなりますが、ぜひ、こちらも併せて身に着けていきましょう!

<例題>
\({x}^{4}\) を \((x+2){(x-3)}^{2}\) で割った余りを求めよ

<解答>
整式を \(x\) の3次式で割った余りは、高々2次式なので、求める余りは \(a{x}^{2}+bx+c\) と置くことができ、商 \(Q(x)\) を用いて、

\[{\small{x}^{4}=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x)+a{x}^{2}+bx+c}・・・①\]

と書くことができます。この両辺に、\(x=-2\) を代入すると、

\[\begin{alignat*}{3}
{(-2)}^{4}&=(-2+2){(-2-3)}^{2}Q(-2) \\
&\quad\quad+a\cdot{(-2)}^{2}+b\cdot(-2)+c
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ 4a-2b+c=16・・・②\]

同様に、\(x=3\) を代入すると、

\[\begin{alignat*}{3}
{3}^{4}&=(3+2){(3-3)}^{2}Q(3) \\
&\quad\quad+a\cdot{3}^{2}+b\cdot 3+c
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ 9a+3b+c=81・・・③\]

③-②より、

\[\begin{alignat*}{3}
&{\small(9a+3b+c)-(4a-2b+c)=81-16} \\
\Leftrightarrow\ &5a+5b=65
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ b=13-a・・・④\]

②×3+③×2より、

\[\begin{alignat*}{3}
&{\small(4a-2b+c)\cdot 3+(9a+3b+c)\cdot 2=16\cdot 3+81\cdot 2} \\
\Leftrightarrow\ &30a+5c=210
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ c=42-6a・・・⑤\]

④⑤を①に代入して、

\[\begin{alignat*}{3}
{x}^{4}&=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x) \\
&\quad+a{x}^{2}+(13-a)x+(42-6a)
\end{alignat*}\]

(ここからが、\((x-\alpha){(x-\beta)}^{2}\) の場合の特徴的な部分です!)

(\(\ (x-3)\) で割り算して次数を下げたい!という気持ちで、)両辺から、\({3}^{4}\) を引き算すると、

\[\begin{alignat*}{3}
&{x}^{4}-{3}^{4} \\
&=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x) \\
&\quad+a{x}^{2}+(13-a)x+(42-6a)-{3}^{4} \\
&=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x) \\
&\quad+a{x}^{2}+(13-a)x-(39+6a) \\
&=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x) \\
&\quad+(x-3)\{ax+(13+2a)\}
\end{alignat*}\]

\({x}^{4}-{3}^{4}\ \)\(=(x-3)({x}^{3}\ \)\(+3{x}^{2}\ \)\(+9x\ \)\(+27)\) に注意すると、

\[\begin{alignat*}{3}
&(x-3)({x}^{3}+3{x}^{2}+9x+27) \\
&=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x) \\
&\quad+(x-3)\{ax+(13+2a)\} \\
\Leftrightarrow\ &(x-3) \\
&\quad\times[({x}^{3}+3{x}^{2}+9x+27) \\
&\quad\quad-(x+2)(x-3)Q(x) \\
&\quad\quad-\{ax+(13+2a)\}]=0 \\
\Leftrightarrow\ &(x-3) \\
&\quad\times\{{x}^{3}+3{x}^{2}+(9-a)x+(14-2a) \\
&\quad\quad-(x+2)(x-3)Q(x)\}=0
\end{alignat*}\]

したがって、

  • \(x=3\)・・・⑥
  • \({x}^{3}+3{x}^{2}+(9-a)x+(14-2a)\)
    \(-(x+2)(x-3)Q(x)=0\)・・・⑦

⑦の両辺に、\(x=3\) を代入すると、

\[\begin{alignat*}{3}
&{3}^{3}+3\cdot{3}^{2}+(9-a)\cdot 3+(14-2a) \\
&\quad\quad-(3+2)(3-3)Q(3)=0 \\
\Leftrightarrow\ &27+27+27-3a+14-2a=0 \\
\Leftrightarrow\ &5a=95
\end{alignat*}\]

\[\therefore\ a=19\]

④⑤より、

\[b=13-a=13-19=-6\]

\[c=42-6a=42-6\cdot 19=-72\]

よって、⑦から、余りは \(19{x}^{2}-6x-72\) と求められました。

一方で、\({x}^{4}\ \)\(=(x+2){(x-3)}^{2}Q(x)\ \)\(+19{x}^{2}\ \)\(-6x\ \)\(-72\) の両辺に、\(x=3\ (⑥)\) を代入すると、

  • 左辺=\({3}^{4}=81\)
  • 右辺=\((3+2){(3-3)}^{2}Q(3)+19\cdot{3}^{2}\)\(-6\cdot 3\ \)\(-72\ \)\(=81\)

となり、左辺=右辺となるため、\(x=3\) の場合も等式を満たすことがわかります。

したがって、余りは、\(19{x}^{2}-6x-72\) と求めることができました。

ここでのポイントは、\(\ (x-3)\) で割り算して次数を下げたい!という気持ちで、両辺から\({3}^{4}\) を引き算したところにあります。

これにより、うまく因数分解して、割り算をすることができました。

割る式が \((x-\alpha){(x-\beta)}^{2}\) の場合、
\((x-\beta)\) で割り算したい!という気持ちで、\({\beta}^{n}\) を引き算する

また、こちらのポイントを利用すれば、\({(x-\alpha)}^{2}{(x-\beta)}^{2}\) の場合でも、同様に余りを求めることができます。

ぜひ、自分の手で確かめてみてください!

おわりに

お疲れさまでした!今回は、割る式に2乗を含む形(重解型)の、余りの求め方を見てきました。

重解型の場合でも、頑張れば余りを求められる、ということが理解いただけたのではないかと思います。

難関大学を目指されている方は、どうやって解くか、解答の方針を立てるだけで精一杯、ということもよくあると思います。

そんな中で、多少計算が大変でも頑張れば求められる、というのは、とてもありがたいことになってきます。

ぜひ、面倒くさがらずに、一度手を動かしてみて、重解型の問題の解ける感覚を掴んでいただければうれしいです!

【次数下げによる、重解型の余りの求め方】

  1. 整式 \(P(x)\) を \({(x-\alpha)}^{2}\) で割り算した余りを \(ax-b\) と置く
  2. \(\alpha\) を代入し、\(b=(a\) の式\()\) の形にして、整式 \(P(x)\) から \(b\) を消去する
  3. 改めて、整式 \(P(x)\) を \((x-\alpha)\) で因数分解し、「\(=0\)」の形を作る
  4. \((x-\alpha)\) でない方の因数に、\(x=\alpha\) を代入し、\(a\) を求める
  5. \(a\) から \(b\) を求めることで、余りが求められる
  6. 最後に、\(x=\alpha\) の場合にも、等式を満たすことを確認して完了

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