【整式の割り算の余りの求め方(割る式が2次以上・重解がない場合)】
整式 \(P(x)\) を \(A(x-{b}_{1})(x-{b}_{2})\cdot\cdot\cdot(x-{b}_{n})\) で割り算する。\((A\) は定数、\(n\geqq 2,\)\({b}_{k}\ne{b}_{l})\)
このとき、整式の割り算の余りは高々 \((n-1)\) 次式であり、以下のように書ける。
\[{r}_{n-1}\cdot{x}^{n-1}+・・・+{r}_{1}\cdot x+{r}_{0}\]
\(P({b}_{1}),P({b}_{2}),・・・,P({b}_{n})\) をそれぞれ計算し、\({r}_{k}\ (0\leqq k\leqq n-1)\) についての \(n\) 元1次連立方程式として解くことで、余りを求められる。
今回は、整式の割り算シリーズとして、割る式が2次以上の場合の余りの求め方を見ていきます。
整式の割り算の余りを求めさせる問題は、共通テストでも定番で、必ず身に着けておきたいものです。
特に、割る式が2次・3次の場合は、2元(or 3元)1次連立方程式として解くことになるため、一定程度の計算力があるかを判定するという意味でも、うってつけの問題と言えます。
ぜひ、今回の解説を通じて、整式の割り算の余りを求める問題をマスターしていきましょう!
ちなみに、割る式の次数が2次以上の場合を解説しますが、1次の場合は、剰余の定理を表します。
剰余の定理も、狙われやすいテーマになりますので、ぜひ合わせてしっかりと押さえておきましょう。
※剰余の定理については、こちらのページで解説しています
解説
(復習)整式の割り算の定義と、余りの次数
整式の割り算の余りを求めるにあたり、余りの置き方が非常に重要になります。(というよりも、これができれば、後は機械的な処理が続くだけなので、ほぼ解けたも同然です。)
そこで、整式の割り算の定義を振り返りながら、どのように余りを置くかを確認していきます。
まず、整式の割り算は、以下のように定義されるのでした。
【整式の割り算(定義)】
与えられた整式 \(P(x),\)\(A(x)\) に対して、「\(P(x)\) を \(A(x)\) で割り算する」とは、以下を満たす整式 \(Q(x),\)\(R(x)\) を求めることと定義する
※この \(Q(x)\) を商、\(R(x)\) を余りと呼ぶ
- \(P(x)=A(x)\cdot Q(x)+R(x)\)
- \(A(x)\) の次数 \(>\) \(R(x)\) の次数
※こちらの定義については、以下のページで詳しく解説しています
この定義によると、割る式 \(A(x)\) が \(n\) 次式の場合、余り \(R(x)\) の次数は \((n-1)\) 次式以下となります。
したがって、余りは、
\[{r}_{n-1}\cdot{x}^{n-1}+・・・+{r}_{1}\cdot x+{r}_{0}\]
と置くことができました。
割られる式が3次式の場合
それでは、実際に余りを求めてみましょう。
<例題>
\({x}^{3}\) を \({x}^2+x+2\) で割った余りを求めよ
<解答>
割る式は \(x\) の2次式のため、整式の割り算の定義から、余りは高々1次式となり、この余りを \({r}_{1}\cdot x+{r}_{0}\) と置くことができます。
また、与えられた割る式は、\({x}^2+x+2=(x-1)(x+2)\) と変形できるため、商を \(Q(x)\) とすると、
\[{x}^{3}=(x-1)(x+2)Q(x)+{r}_{1}\cdot x+{r}_{0}\]
と書くことができます。
両辺に \(x=1\) を代入すると、
\[{1}^{3}=(1-1)(1+2)Q(1)+{r}_{1}\cdot 1+{r}_{0}\]
\[\therefore\ {r}_{1}+{r}_{0}=1\quad・・・①\]
同様に、両辺に \(x=-2\) を代入すると、
\[{\small{(-2)}^{3}=(-2-1)(-2+2)Q(-2)+{r}_{1}\cdot (-2)+{r}_{0}}\]
\[\therefore\ -2{r}_{1}+{r}_{0}=-8\quad・・・②\]
①-②より、
\[({r}_{1}+{r}_{0})-(-2{r}_{1}+{r}_{0})=1-(-8)\]
\[\therefore\ {r}_{1}=3\]
これを①に代入すると、
\[3+{r}_{0}=1\]
\[\therefore\ {r}_{0}=-2\]
したがって、余りは、\(3x-2\) と求めることができました。
なお、今回は、割る式が2次式の場合を見てきましたが、3次以上の場合も同様に処理することで、余りを求めることができます。(連立方程式を解くのが、かなり大変になりますが。。。)
ここで、少し振り返ってみると、求めたのは余りだけで、商 \(Q(x)\) は具体的に求めていないことがわかります。実は、これが最大のポイントです。
整式の割り算の余りを求める方法はいくつかありますが、最もスタンダードなのは、筆算や組立除法だと思います。
ただ、これらの方法には弱点があり、割られる式の最高次が具体的な数として与えられないと使えません。
その理由は、実際に筆算や組立除法をやってみるとわかりますが、必ず、商も併せて求めることになり、商によって余りが変わってきてしまうためです。
一方で、今回解説する方法では、商を求められない代わりに、割られる式が \(n\) 次のような一般的な場合でも、余りを求めることができます。
次の章では、実際に、割られる式が \(n\) 次式の場合の余りを求めてみましょう。
割られる式の次数が具体的に与えられなくても、余りを求められる!
割られる式が \(n\) 次式の場合
それでは、割られる式が \(n\) 次式の場合の具体例を見てみましょう。
<例題>
\({x}^{n}\) を \({x}^2+x+2\) で割った余りを求めよ
<解答>
割る式は \(x\) の2次式のため、整式の割り算の定義から、余りは高々1次式となり、この余りを \({r}_{1}\cdot x+{r}_{0}\) と置くことができます。(ここは、割られる式が3次式の場合と同じです)
したがって、商を \(Q(x)\) とすると、
\[\begin{alignat*}{3}
{x}^{n}&=({x}^2+x+2)Q(x)+{r}_{1}\cdot x+{r}_{0} \\
&=(x-1)(x+2)Q(x)+{r}_{1}\cdot x+{r}_{0}
\end{alignat*}\]
と書けます。
両辺に \(x=1\) を代入すると、
\[{1}^{n}=(1-1)(1+2)Q(1)+{r}_{1}\cdot 1+{r}_{0}\]
\[\therefore\ {r}_{1}+{r}_{0}=1\quad・・・①\]
同様に、両辺に \(x=-2\) を代入すると、
\[{\small{(-2)}^{n}=(-2-1)(-2+2)Q(-2)+{r}_{1}\cdot (-2)+{r}_{0}}\]
\[\therefore\ -2{r}_{1}+{r}_{0}={(-2)}^{n}\quad・・・②\]
①-②より、
\[({r}_{1}+{r}_{0})-(-2{r}_{1}+{r}_{0})=1-{(-2)}^{n}\]
\[\therefore\ {r}_{1}=\frac{1-{(-2)}^{n}}{3}\]
これを①に代入すると、
\[\frac{1-{(-2)}^{n}}{3}+{r}_{0}=1\]
\[\therefore\ {r}_{0}=\frac{2+{(-2)}^{n}}{3}\]
となり、割られる式が \(n\) 次式の場合でも、余りを求めることができました!
ちなみに、\(n=3\) を代入してみると、以下のようになり、前の章で見た結果と一致していることがわかります。
\[{r}_{1}=\frac{1-{(-2)}^{3}}{3}=3\]
\[{r}_{0}=\frac{2+{(-2)}^{3}}{3}=-2\]
おわりに
お疲れさまでした!今回は、整式の割り算シリーズとして、割る式が2次以上の場合の余りの求め方を見てきました。
途中でも見ましたが、割り算の余りを求める方法はいくつかあるものの、割られる式の形によっては求められない場合もあります。
そんなとき、商を求めることを諦めることによって、余りが求められるということで、非常に重宝する方法となります。
整式の割り算で、余りだけを求める場合は、基本的に、こちらの方法を利用することになります。ぜひ、実際の計算問題を通じてマスターしていきましょう!
・・・と、「基本的に」と書いたのには理由があり、実は、今回の方法では太刀打ちできない場合があります。
それは、割る式に \({(x-\alpha)}^{k}\) のように、累乗を含む場合です。(こちらのブログでは、「重解型」と呼びます)
この「重解型」の場合は、計算に多少の工夫が必要になり、別のページで解説しています。
共通テストではあまり出ないかもしれませんが、難関大学の2次試験などでは出題されることも十分に考えられます。こちらも含めて押さえておいていただければと思います。
重解型の解説は、こちらのページで行っていますので、ぜひ、併せてご覧ください。
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