【微分による、重解型の余りの求め方】
- 整式 \(P(x)\) を \({(x-\alpha)}^{n}\) で割り算した余りを \(\sum\limits_{k=0}^{n-1}{r}_{k}\cdot{x}^{k}\) と置く
\(({\small P(x)={(x-\alpha)}^{n}Q(x)+\sum\limits_{k=0}^{n-1}{r}_{k}\cdot{x}^{k}})\) - \(x=\alpha\) を代入して、\(P(\alpha)=\sum\limits_{k=0}^{n-1}{r}_{k}\cdot{\alpha}^{k}\)
- 1.の両辺を \(x\) で微分して、
\[\begin{alignat*}{3}
P'(x)&=n{(x-\alpha)}^{n-1}Q(x) \\
&\quad\quad+{(x-\alpha)}^{n}Q'(n) \\
&\quad\quad+\sum\limits_{k=1}^{n-1}k\cdot{r}_{k}\cdot{x}^{k-1}
\end{alignat*}\] - 3.の両辺に \(x=\alpha\) を代入して、
\[P'(\alpha)=\sum\limits_{k=1}^{n-1}k\cdot{r}_{k}\cdot{\alpha}^{k-1}\] - 3. 4. の操作を繰り返すと、\(n\) 個の未知数 \({r}_{k}\ (0\leqq k\leqq n-1)\) に対し、\(n\) 個の関係式を得られるため、\(n\) 元1次連立方程式として解けば完了
今回は、微分による、整式の割り算の余りの求め方を解説します。
こちらの方法は、割る式が重解型のときに、利用する方法です。
重解型の余りは、以下のようにいくつか求め方があるのですが、最も汎用的で、あらゆる場合に対応できる万能な方法です。
方法 | 割られる式 | 割る式 | その他 | 方法 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単項式 | 多項式 | 累乗 | 複数の因数 例:\((x-\alpha){(x-\beta)}^{2}\) | 計算量 | 必要な知識 | |||
2次 | 3次 以上 | |||||||
次数下げ | ○ | × | ○ | × | ○ | 多い | \(n\) 乗-\(n\) 乗の因数分解 (数学IIまででOK) | 次数下げ |
二項定理 | ○ | × | ○ | ○ | × | 少ない | 二項定理が必要 (数学IIまででOK) | 二項定理 |
微分 (数学III) ※今回 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 比較的 少なめ | 積の微分 (数学IIIの知識が必要) | 微分 (数学III) ※今回 |
非常に万能であるがゆえ、この方法だけ覚えておけばよい、のですが、1点だけネックがあります。
それは、数学IIIの知識が必要、ということ。
そこで、解説に入る前に、事前準備として、今回利用する「積の微分」「合成関数の微分」を確認しています。忘れてしまった場合は、適宜こちらに戻ってきてください。(すでに知っているよ!という方は、飛ばしていただければと思います)
ぜひ、数学IIIは勉強してないよという方や、受験で使わないので勉強しない予定という方も、全く難しくないので、併せて勉強してみましょう!
(事前準備)積の微分・合成関数の微分
【積の微分】
関数 \(f,\)\(g\) に対して、
\[{\small\{f(x)\cdot g(x)\}’=f'(x)\cdot g(x)+f(x)\cdot g'(x)}\]
【合成関数の微分】
関数 \(f,\)\(g\) に対して、
\[\{f(g(x))\}’=f'(g(x))\cdot g'(x)\]
2つの関数が与えられたとき、このような関係が成り立ちます。
ただ、これだけでは「何を言っているか、全く分からん!」だと思うので、それぞれ具体例を見てみましょう。
積の微分
<具体例(積の微分)>
\(h(x)={x}^{3}(2x+1)\) を \(x\) で微分する
<解答>
\(f(x)={x}^{3},\)\(g(x)=2x+1\) と置くと、\(h(x)=f(x)\cdot g(x)\) となります。
また、\(f'(x)=3{x}^{2},\)\(g'(x)=2\) です。(これは、数学IIの範囲です)
ここで、「積の微分」を考えると、
\[\begin{alignat*}{3}
h'(x)&=\{f(x)\cdot g(x)\}’ \\
&\stackrel{\mathrm{(※)}}{=}f'(x)\cdot g(x)+f(x)\cdot g'(x) \\
&=3{x}^{2}\cdot (2x+1)+{x}^{3}\cdot 2 \\
&=8{x}^{3}+3{x}^{2}
\end{alignat*}\]
と求めることができました。
※こちらの操作で、「積の微分」を利用しています
ちなみに、数学IIで勉強するように、\(h(x)={x}^{3}(2x+1)\) の右辺を展開してから微分してみると、
\[\begin{alignat*}{3}
h(x)&={x}^{3}(2x+1) \\
&=2{x}^{4}+{x}^{3}
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ h'(x)=8{x}^{3}+3{x}^{2}\]
となり、微分の結果が一致することがわかります。
合成関数の微分
【合成関数の微分】
関数 \(f,\)\(g\) に対して、
\[\{f(g(x))\}’=f'(g(x))\cdot g'(x)\]
次に、「合成関数の微分」についての具体例を見てみましょう。
<具体例(合成関数の微分)>
\(h(x)={(x+1)}^{4}\) を \(x\) で微分する
<解答>
\(f(x)={x}^{4},\)\(g(x)=x+1\) と置くと、\(h(x)=f(g(x))\) となります。
(\(f(x)\) の \(x\) を \((x+1)\) に置き換えてみると、\(h(x)\) と同じ形をしていることがわかると思います)
また、\(f'(x)=4{x}^{3},\)\(g'(x)=1\) です。(これは、数学IIの範囲です)
ここで、「合成関数の微分」を考えると、
\[\begin{alignat*}{3}
h'(x)&=\{f(g(x))\}’ \\
&\stackrel{\mathrm{(※1)}}{=}f'(g(x))\cdot g'(x) \\
&=f'(x+1)\cdot 1 \\
&\stackrel{\mathrm{(※2)}}{=}4{(x+1)}^{3}
\end{alignat*}\]
と求めることができました。
(※1)こちらの操作で、「合成関数の微分」を利用しています
(※2)こちらの操作では、\(f'(x)=4{x}^{3}\) の \(x\) を \((x+1)\) に置き換えています。
こちらでも、数学IIで勉強するように、\(h(x)={(x+1)}^{4}\) の右辺を展開してから微分してみると、
\[\begin{alignat*}{3}
h(x)&={(x+1)}^{4} \\
&={x}^{4}+4{x}^{3}+6{x}^{2}+4x+1
\end{alignat*}\]
\[\begin{alignat*}{3}
\therefore\ h'(x)&=4{x}^{3}+12{x}^{2}+12x+4 \\
&=4({x}^{3}+3{x}^{2}+3x+1) \\
&=4{(x+1)}^{3}
\end{alignat*}\]
となり、微分の結果が一致することがわかります。
解説
割られる式が単項式の場合
割る式が \({(x-\alpha)}^{k}\) の場合
それでは、先ほどの「積の微分」「合成関数の微分」を利用して、実際に余りを求めてみましょう。
<例題>
\({x}^{n}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余りを求めよ
<解答>
整式を \(x\) の3次式で割った余りは、高々 \(x\) の2次式となるため、商 \(Q(x)\) を用いて、
\[{x}^{n}={(x-3)}^{3}Q(x)+a{x}^{2}+bx+c・・・①\]
と書くことができます。①の両辺に \(x=3\) を代入すると、
\[{3}^{n}={(3-3)}^{3}Q(3)+a\cdot{3}^{2}+b\cdot 3+c\]
\[\therefore\ c={3}^{n}-9a-3b・・・②\]
(ここからが、微分型の解法の特徴です)
①の両辺を \(x\) で微分すると、
\[\begin{alignat*}{3}
n{x}^{n-1}&=3{(x-3)}^{2}Q(x)+{(x-3)}^{3}Q'(x) \\
&\quad\quad+2ax+b・・・③
\end{alignat*}\]
<補足>
①の右辺の \({(x-3)}^{3}Q(x)\) の部分に、「積の微分」「合成関数の微分」を利用しています
\(i(x)={(x-3)}^{3}Q(x)\) に対して、
- \(f(x)={x}^{3}\)
- \(g(x)=x-3\)
- \(h(x)=Q(x)\)
と置くと、\(i(x)=f(g(x))\cdot h(x)\) となり、それぞれの微分は、
- \(f'(x)=3{x}^{2}\)
- \(g'(x)=1\)
- \(h'(x)=Q'(x)\)
となります。したがって、
\[\begin{alignat*}{3}
i'(x)&=\{f(g(x))\cdot h(x)\}’ \\
&\stackrel{\mathrm{(※1)}}{=}{\small\{f(g(x))\}’\cdot h(x)+f(g(x))\cdot h'(x)} \\
&\stackrel{\mathrm{(※2)}}{=}{\small\{f'(g(x))\cdot g'(x)\}\cdot Q(x)+f(x-3)\cdot Q'(x)} \\
&=3{(x-3)}^{2}Q(x)+{(x-3)}^{3}Q'(x)・・・③
\end{alignat*}\]
と求められます。
(※1)こちらの操作で、「積の微分」を利用しています
(※2)こちらの操作で、「合成関数の微分」を利用しています
③の両辺に \(x=3\) を代入して、
\[\begin{alignat*}{3}
n\cdot{3}^{n-1}&=3{(3-3)}^{2}Q(3)+{(3-3)}^{3}Q'(3) \\
&\quad\quad+2a\cdot x+b
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ b=n\cdot{3}^{n-1}-6a・・・④\]
更にもう一度微分を行います。③の両辺を \(x\) で微分すると、
\[\begin{alignat*}{3}
&n(n-1){x}^{n-2} \\
&=6(x-3)Q(x)+3{(x-3)}^{2}Q'(x) \\
&\quad+3{(x-3)}^{2}Q'(x)+{(x-3)}^{3}Q^{”}(x) \\
&\quad+2a・・・⑤
\end{alignat*}\]
⑤の両辺に \(x=3\) を代入して、
\[\begin{alignat*}{3}
&n(n-1)\cdot{3}^{n-2} \\
&=6(3-3)Q(3)+3{(3-3)}^{2}Q'(3) \\
&\quad+3{(3-3)}^{2}Q'(3)+{(3-3)}^{3}Q^{”}(3) \\
&\quad+2a
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ a=\frac{n(n-1)\cdot{3}^{n-2}}{2}・・・⑥\]
⑥を④に代入して、
\[\begin{alignat*}{3}
b&=n\cdot{3}^{n-1}-6\cdot\frac{n(n-1)\cdot{3}^{n-2}}{2} \\
&=-n(n-2)\cdot{3}^{n-1}・・・⑦
\end{alignat*}\]
⑥⑦を②に代入して、
\[\begin{alignat*}{3}
c&={\small{3}^{n}-9\cdot\frac{n(n-1)\cdot{3}^{n-2}}{2}-3\{-n(n-2)\cdot{3}^{n-1}\}} \\
&=\frac{(n-1)(n-2)\cdot{3}^{n}}{2}
\end{alignat*}\]
したがって、余りは、
\[\begin{alignat*}{3}
&\frac{n(n-1)\cdot{3}^{n-2}}{2}\cdot{x}^{2} \\
&\quad-n(n-2)\cdot{3}^{n-1}\cdot x \\
&\quad\quad+\frac{(n-1)(n-2)\cdot{3}^{n}}{2}
\end{alignat*}\]
と求めることができました!
※なお、二項定理による方法でも、当然、同じ結果が得られます。
同じ整式の割り算の余りを、二項定理で求めた場合は、こちらページで解説していますので、よろしければご覧ください
少し振り返ってみると、微分を繰り返し行うことで、余りの各文字に対する関係式を、連立方程式を解くのに必要な分だけ増やすことができました。
この「微分により関係式を増やす方法」を使えば、割る式に複数の因数を含む場合のような、少々複雑な形でも、うまく必要な分の関係式を得ることができます。
次の章では、割る式が複数の因数の場合を見ていきましょう。
割る式が \({(x-\alpha)}^{k}{(x-\beta)}^{l}\) の場合
<例題>
\({x}^{n}\) を \({(x+2)}^{2}{(x-3)}^{3}\) で割った余りを求めよ
<解答>
整式を \(x\) の5次式で割った余りは、高々 \(x\) の4次式となるため、商 \(Q(x)\) を用いて、
\[\begin{alignat*}{3}
{x}^{n}&={(x+2)}^{2}{(x-3)}^{3}Q(x) \\
&\quad+a{x}^{4}+b{x}^{3}+c{x}^{2}+dx+e・・・①
\end{alignat*}\]
と書くことができます。①の両辺に \(x=-2\) を代入すると、
\[\begin{alignat*}{3}
{(-2)}^{n}&={(-2+2)}^{2}{(-2-3)}^{3}Q(-2) \\
&\quad+a\cdot{(-2)}^{4}+b\cdot{(-2)}^{3} \\
&\quad\quad+c\cdot{(-2)}^{2}+d\cdot(-2)+e
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ {(-2)}^{n}=16a-8b+4c-2d+e・・・②\]
同様に、①の両辺に \(x=3\) を代入すると、
\[\begin{alignat*}{3}
{3}^{n}&={(3+2)}^{2}{(3-3)}^{3}Q(3) \\
&\quad+a\cdot{3}^{4}+b\cdot{3}^{3} \\
&\quad\quad+c\cdot{3}^{2}+d\cdot 3+e
\end{alignat*}\]
\[\therefore\ {3}^{n}=81a+27b+9c+3d+e・・・③\]
(ここからが、微分型の解法の特徴です)
①の両辺を \(x\) で微分すると、
\[\begin{alignat*}{3}
n{x}^{n-1}&=2(x+2){(x-3)}^{3}Q(x) \\
&\quad+{(x+2)}^{2}\cdot 3{(x-3)}^{2}Q(x) \\
&\quad+{(x+2)}^{2}{(x-3)}^{3}Q'(x) \\
&\quad+4a{x}^{3}+3b{x}^{2}+2cx+d・・・④
\end{alignat*}\]
④の両辺に \(x=-2\) を代入すると、④の上3段は \(0\) になるので、
\[\begin{alignat*}{3}
&n\cdot{(-2)}^{n-1} \\
&{\small=4a\cdot{(-2)}^{3}+3b\cdot{(-2)}^{2}+2c\cdot(-2)+d} \\
&=-32a+12b-4c+d・・・⑤
\end{alignat*}\]
同様に、④の両辺に \(x=3\) を代入すると、④の上3段は \(0\) になるので、
\[\begin{alignat*}{3}
&n\cdot{3}^{n-1} \\
&=4a\cdot{3}^{3}+3b\cdot{3}^{2}+2c\cdot 3+d \\
&=108a+27b+6c+d・・・⑥
\end{alignat*}\]
更に、④の両辺を、\(x\) で微分します。
このとき、④の上3段の項を微分した結果には、必ず \((x-3)\) という因数が得られるため、\(x\) の整式 \(A(x)\) を用いて、
\[\begin{alignat*}{3}
n(n-1){x}^{n-2}&=(x-3)A(x) \\
&\quad+12a{x}^{2}+6bx+2c・・・⑦
\end{alignat*}\]
⑦の両辺に \(x=3\) を代入すると、\((3-3)A(3)=0\) なので、
\[\begin{alignat*}{3}
n(n-1)\cdot{3}^{n-2}&=12a\cdot{3}^{2}+6b\cdot x+2c \\
&=108a+18b+2c・・・⑧
\end{alignat*}\]
したがって、以下の通り、5つの未知数 \(a,\)\(b,\)\(c,\)\(d,\)\(e\)に対して、5つの関係式②③⑤⑥⑧が得られたため、5元1次連立方程式として解くことができます!
- ②:\(16a-8b+4c-2d+e\) \(={(-2)}^{n}\)
- ③:\(81a+27b+9c+3d+e\) \(={3}^{n}\)
- ⑤:\(-32a+12b-4c+d\) \(=n\cdot{(-2)}^{n-1}\)
- ⑥:\(108a+27b+6c+d\) \(=n\cdot{3}^{n-1}\)
- ⑧:\(108a+18b+2c\) \(=n(n-1)\cdot{3}^{n-2}\)
これを \(a,\)\(b,\)\(c,\)\(d,\)\(e\) について解くと、以下のようになります。(メチャクチャ計算が大変なため、結果だけを示します。(多分あってるはず。。))
\[\begin{pmatrix}
a \\ \\
b \\ \\
c \\ \\
d \\ \\
e
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
{\small\frac{n(5n-11)3^{n-2} + 2n(-2)^{n-1}}{260}} \\ \\
{\small\frac{n(n-1)(13\cdot3^{n-2} – 2(-2)^{n-1})}{130}} \\ \\
{\small\frac{n(17\cdot3^{n-2} + 4(-2)^{n-1})}{65}} \\ \\
{\small\frac{n(11\cdot3^{n-2} – 8(-2)^{n-1})}{65}} \\ \\
{\small\frac{3^n(130 – 18n^2 + 18n) – 36n(-2)^{n-1}}{260}}
\end{pmatrix}\]
したがって、余りは、以下のように求めることができました!
\[\begin{alignat*}{3}
&\frac{n(5n-11)3^{n-2} + 2n(-2)^{n-1}}{260}\cdot{x}^{4} \\
&\quad+\frac{n(n-1)(13\cdot3^{n-2} – 2(-2)^{n-1})}{130}\cdot{x}^{3} \\
&\quad+\frac{n(17\cdot3^{n-2} + 4(-2)^{n-1})}{65}\cdot{x}^{2} \\
&\quad+\frac{n(11\cdot3^{n-2} – 8(-2)^{n-1})}{65}\cdot x \\
&\quad+\frac{3^n(130 – 18n^2 + 18n) – 36n(-2)^{n-1}}{260}
\end{alignat*}\]
ここまでで割られる式が単項式の場合の、余りの求め方を見ました。
微分による求め方の場合、微分を繰り返せば、必要な分の式を用意できるため、原理的には、割る式の次数がどれだけ増えても、割る式の因数の種類がどれだけ増えても、余りを求められます。
これが非常にうれしいポイントで、「次数下げ(3次以上は×)」や「二項定理(複数の因数を含むと×)」では求められない余りも、求められるようになりました!
(当然、計算量は驚異的なスピードで跳ね上がりますが。。。)
微分型の解法であれば、(原理的には、)割る式の次数がどれだけ増えても、割る式の因数の種類がどれだけ増えても、余りを求めることができる!
最後に、次の章で多項式の場合を見ていきます。これを見れば、微分型の解法が、本当に使えるということを実感いただけると思います
割られる式が多項式の場合
割る式が \({(x-\alpha)}^{k}\) の場合
<例題>
\({x}^{n+2}+{x}^{n+1}-4{x}^{n}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余り \((n\geqq 3)\)
<解答>
単項式の場合で求めた「\({x}^{n}\) を\({(x-3)}^{3}\) で割った余り」を利用します。
こちらの結果から、左辺の各項を余りは、以下のようになります。
① | \({x}^{n+2}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余り | \(\frac{1}{2}\cdot{3}^{n}(n+2)(n+1){x}^{2}\) \(\quad-{3}^{n+1}(n+2)nx\) \(\quad+\frac{1}{2}\cdot{3}^{n+2}(n+1)n\) |
② | \({x}^{n+1}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余り | \(\frac{1}{2}\cdot{3}^{n-1}(n+1)n{x}^{2}\) \(\quad-{3}^{n}(n+1)(n-1)x\) \(\quad+\frac{1}{2}\cdot{3}^{n+1}n(n-1)\) |
③ | \({x}^{n}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余り | \(\frac{1}{2}\cdot{3}^{n-2}n(n-1){x}^{2}\) \(\quad-{3}^{n-1}n(n-2)x\) \(\quad+\frac{1}{2}\cdot{3}^{n}(n-1)(n-2)\) |
したがって、①+②-4×③を計算して、余りは、
\[\begin{alignat*}{3}
&{3}^{n-2}(4{n}^{2}+17n+9)\cdot{x}^{2} \\
&\quad-{3}^{n-1}(8{n}^{2}+26n-3)\cdot x \\
&\quad\quad+{3}^{n}(4{n}^{2}+9n-4)
\end{alignat*}\]
と求めることができました!
おわりに
お疲れさまでした!今回は、微分による、整式の割り算の余りの求め方を解説しました。
途中でも見てきた通り、微分型の解法であれば、(原理的には、)
- 割る式の次数がどれだけ増えても、
- 割る式の因数の種類がどれだけ増えても、
(原理的には、)余りを求めることができます。
数学の世界では、「どれだけ頑張っても計算できない」と、「大変だけど、頑張れば求められる」ということには、天と地との差ほどがあります。
今回の解説を通じて、計算すれば求められるありがたさが、少しでも伝わっているとうれしいです。
また、今回は、数学IIIで勉強する、「積の微分」「合成関数の微分」を利用しました。
数学III・数学Cでは、新しく学ぶことが増えたり、式の形が複雑だったりと、一見難しそうに見えるのですが、今回の整式の余りを求めるときなど、
- その他の方法では求められない
- 求められたとしても、非常に計算量が増えてしまう
といったときに、非常に重宝するツールとなります。
別のページでは、数学III・数学Cの解説も上げていきますので、ぜひ、楽しみに学んでいただけると幸いです。
【微分による、重解型の余りの求め方】
- 整式 \(P(x)\) を \({(x-\alpha)}^{n}\) で割り算した余りを \(\sum\limits_{k=0}^{n-1}{r}_{k}\cdot{x}^{k}\) と置く
\(({\small P(x)={(x-\alpha)}^{n}Q(x)+\sum\limits_{k=0}^{n-1}{r}_{k}\cdot{x}^{k}})\) - \(x=\alpha\) を代入して、\(P(\alpha)=\sum\limits_{k=0}^{n-1}{r}_{k}\cdot{\alpha}^{k}\)
- 1.の両辺を \(x\) で微分して、
\[\begin{alignat*}{3}
P'(x)&=n{(x-\alpha)}^{n-1}Q(x) \\
&\quad\quad+{(x-\alpha)}^{n}Q'(n) \\
&\quad\quad+\sum\limits_{k=1}^{n-1}k\cdot{r}_{k}\cdot{x}^{k-1}
\end{alignat*}\] - 3.の両辺に \(x=\alpha\) を代入して、
\[P'(\alpha)=\sum\limits_{k=1}^{n-1}k\cdot{r}_{k}\cdot{\alpha}^{k-1}\] - 3. 4. の操作を繰り返すと、\(n\) 個の未知数 \({r}_{k}\ (0\leqq k\leqq n-1)\) に対し、\(n\) 個の関係式を得られるため、\(n\) 元1次連立方程式として解けば完了
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