【整式の割り算】重解型の余りの求め方(②二項定理)

【二項定理による、重解型の余りの求め方】

  1. 割られる式 \({x}^{n}\) に、無理やり、割る式 \((x-\alpha)\) の形を作り、\({\{(x-\alpha)+\alpha\}}^{n}\) と変形する
  2. 1. で得られた式に二項定理を適用して、割る式を含まない項だけ外に出す
  3. 2. で外に出した項が求める余りとなるため、整理して完了

今回は、整式の割り算において、二項定理を用いて余りを求める方法をご紹介します。

整式の割り算の余りの求め方はいくつかありますが、一番スマートな方法な気がしていて、私は個人的に大好きな方法です。

ぜひ、今回の解説を通じて、みなさんにもこちらの方法を好きになってもらえると、とてもうれしいです!

なお、今回の解説は、二項定理を学習済みであることを前提に進めます。二項定理については、こちらのページをご覧ください。

解説

\({x}^{n}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余り

<例題>
\({x}^{n}\) を \({(x-3)}^{3}\) で割った余りを求めよ

<解答>
\({x}^{n}=\{(x-3)+3\}^{n}\) と式変形できることから、二項定理より、

\[\begin{alignat*}{3}
{x}^{n}&=\{(x-3)+3\}^{n} \\
&=\sum^{n}_{k=0}{}_n \mathrm{C}_k\ {(x-3)}^{k}\cdot{3}^{n-k} \\
&=\sum^{n}_{k=\textcolor{#FF0000}{3}}{}_n \mathrm{C}_k\ {(x-3)}^{k}\cdot{3}^{n-k} \\
&\qquad\quad+{}_n \mathrm{C}_2\ {(x-3)}^{2}\cdot{3}^{n-2} \\
&\qquad\quad+{}_n \mathrm{C}_1\ {(x-3)}^{1}\cdot{3}^{n-1} \\
&\qquad\quad+{}_n \mathrm{C}_0\ {(x-3)}^{0}\cdot{3}^{n}
\end{alignat*}\]

このうち、第1項の \(\sum\) は、すべて、\({(x-3)}^{3}\) を因数に持つため、\({(x-3)}^{3}\) で割り切れます。

したがって、

\[\begin{alignat*}{3}
&{}_n \mathrm{C}_2\ {(x-3)}^{2}\cdot{3}^{n-2} \\
&\quad+{}_n \mathrm{C}_1\ {(x-3)}^{1}\cdot{3}^{n-1}+{}_n \mathrm{C}_0\ {(x-3)}^{0}\cdot{3}^{n} \\
&=\frac{n(n-1)}{2\cdot 1}({x}^{2}-6x+9)\cdot{3}^{n-2} \\
&\quad+n\cdot(x-3)\cdot{3}^{n-1}+1\cdot 1\cdot{3}^{n} \\
&{\small=\frac{1}{2}\cdot{3}^{n-2}\{n(n-1)({x}^{2}-6x+9)+6n(x-3)+18\}} \\
&{\small=\frac{1}{2}\cdot{3}^{n-2}\{n(n-1){x}^{2}-6n(n-2)x+9(n-1)(n-2)\}}
\end{alignat*}\]

と余りを求めることができました!

二項定理による、余りの求め方のポイント

今回の検討の過程を振り返ると、ポイントは2つありました。

1つ目のポイントは、\({x}^{n}=\{(x-3)+3\}^{n}\) と式変形したこと。

このように、無理やり、割る式の形を作り出したことで、二項定理を利用して、余りを導出することができました。

無理やり欲しい形を作る必要があり、多少の慣れは必要ですが、その分、次数下げの方法に比べて、計算量は圧倒的に少なくて済みます。

\({x}^{n}\) を変形して、無理やり、割る式の形を作り、二項定理を適用する!

2つ目のポイントは、(何も意識しなくても、)余りが \(x\) の2次式になっていること。

割る式の次数が、\(x\) の \(k\) 次式の場合、整式の割り算の定義(※)から、その余りは、高々 \((k-1)\) 次式になります。

今回は、割る式が \({(x-3)}^{3}\) で3次式のため、高々2次式になってほしいところ、たしかに得られた余りは2次式になっており、何も意識しなくても、定義通りに余りが求められていることがわかります。

※これは、\(\sum\) の計算で \(0\leqq k\leqq 2,\)\(3\leqq k\) で分けて計算したところから明らかです。ただ、得られたものが定義から外れたものではお話にならないため、あえてポイントとしてピックアップしました。

二項定理による余りの求め方を利用すれば、自動的に(何も意識しなくても)、定義通りの整式の割り算の余りが求められる!

※「整式の割り算の定義」については、こちらのページで解説していますので、併せてご覧ください

おわりに

お疲れさまでした!今回は、二項定理による、整式の割り算の余りの求め方を解説しました。

解説を見ていただければ感じていただいたかもしれませんが、こちらの方法のポイントは、とにかく、欲しい形を無理やり作ったことにあります。

慣れないと、なかなかうまく使いこなせないワザのため、高校生だと得意な方はあまりいない印象です。

一方で、数学を学んでいると、このように「欲しい形を無理やり作る」ということが、頻繁に現れます。そして、難関大学の入試では、このような発想が求められる問題も、結構出題されるようです。

ぜひ、この「欲しい形を無理やり作る」という意識を早めに持って、実際の問題にあたることで、数学的な能力を向上させ、周りと差をつけていきましょう!

【二項定理による、重解型の余りの求め方】

  1. 割られる式 \({x}^{n}\) に、無理やり、割る式 \((x-\alpha)\) の形を作り、\({\{(x-\alpha)+\alpha\}}^{n}\) と変形する
  2. 1. で得られた式に二項定理を適用して、割る式を含まない項だけ外に出す
  3. 2. で外に出した項が求める余りとなるため、整理して完了

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