【複2次式型の方程式(4次)】
複2次式の形をした4次方程式は、2乗−2乗の形にし、和と差の積の因数分解をしたい!という気持ちで変形する。
- 4次と0次の項に着目して、無理やり \({({x}^{2}-\alpha)}^{2}-{(kx)}^{2}=0\) の形に変形する
- 和と差の積の公式を利用して、以下の通り因数分解
\({({x}^{2}-\alpha)}^{2}-{(kx)}^{2}\)\(=\{({x}^{2}-\alpha)-kx\}\{({x}^{2}-\alpha)+kx\}\) - 前半・後半の中カッコ \(\{\}\) を、それぞれ \(x\) の2次式と見て、2次方程式を解く
今回は、複2次式型の方程式(4次)の解法を解説します。
高校数学で出題される高次方程式は、大きく次の3つのパターンに分けられます。
- 因数分解型
- 相反方程式型
- 複2次式型
この中で、検討の際の基本路線となるのは、1つ目の因数分解型で、因数定理を利用して、\(x\) に色々と代入し、方程式が全体として「\(=0\)」となるものを探します。
一方で、少々マイナーではあるものの、相反方程式型や複2次式型は時々出題されています。
今回の複2次式型の解説を通じ、高次方程式を王道からマイナーまで全て網羅することで、確実に周りと差をつけることができます。
ぜひ張り切って学習していきましょう!
※王道の「因数分解型(因数定理)」と、「相反方程式型」は、こちらを参照下さい。
解説
複2次式とは
こちらの式をご覧下さい。
\[{x}^{4}+3{x}^{2}+4\]
最後の項 \(1\) を、\(x\) の \(0\) 乗の項と見ると、各項の次数は、\(4,2,0\) と全て偶数となっています。
このような、次数がすべて偶数の項のみからなる多項式を、複2次式といいます。
複2次式型の方程式(4次)の解法
ここで、上で見た複2次式 \(=0\) という4次方程式を考えてみましょう。
\[{x}^{4}+3{x}^{2}+4=0\]
まずは、因数定理を利用することを考え、\(x\) に \(\pm 1,\pm2,\pm4\) を代入してみますが、「\(=0\)」とはならず、うまくいきません。
※左辺は、4乗+2乗+0乗の形をしており、\(x=0\) で最小値をとります。
\(x=0\) を代入してみると、左辺 \(=4>0\) のため、実数の範囲では解を持ちません。
また、相反方程式を疑ってみますが、係数は、\(1,0,3,0,4\) なので、相反方程式の解法が使える場面でもありません。
※係数だけを並べた時に、左から見ても右から見ても同じである方程式を「相反方程式」といい、両辺を \({x}^{2}\) で割り算することで、\((x+\frac{1}{x})\) の2次方程式とみて解くことができます。詳細はこちらをご覧下さい。
・・・となると、この方程式は解けないのか。
と、あきらめたくなりますが、ここで複2次式型方程式の解法の出番です!
まず、与えられた方程式を、何とかして、
\[{({x}^{2}-\alpha)}^{2}-{(kx)}^{2}\]
という形に変形します。
\({({x}^{2}-\alpha)}^{2}-{(kx)}^{2}\) の形に変形する
実際に変形してみると、
\[\begin{alignat*}{3}
&{x}^{4}+3{x}^{2}+4=0 \\
\Leftrightarrow\ &({x}^{4}+4{x}^{2}+4)-{x}^{2}=0 \\
\Leftrightarrow\ &{({x}^{2}+2)}^{2}-{x}^{2}=0 \\
\end{alignat*}\]
とできます。
ここでのポイントは、
後ろの項には、\(x\) の2次の項しか残っていない
ということです。
私たちが中学校で学ぶ、2次式の「平方完成」では、以下の流れで変形していました。
最高次(2次)と次の次数(1次)の項に注目
↓
無理やり \({(x-\alpha)}^{2}\) という形を作る
↓
(余分な)0次の項だけ残る
「複2次式型方程式」の場合は、以下のような操作となり、「注目する項」「残る項」の次数が異なります。(これが次の章で生きてきます!)
最高次(4次)と最低次(0次)の項に注目
↓
無理やり \({({x}^{2}-\alpha)}^{2}\) という形を作る
↓
(余分な)2次の項だけ残る
【複2次式型方程式(4次)の変形】
4次と0次の項に注目し、無理やり \({({x}^{2}-\alpha)}^{2}\) という形を作り、(余分な)2次の項だけ残る
【(参考)2次式の平方完成】
2次と1次の項に注目し、無理やり \({(x-\alpha)}^{2}\) という形を作り、(余分な)0次の項だけ残る
(2次式)×(2次式)に因数分解し、2次方程式を解く
ここまでで、
\[{({x}^{2}+2)}^{2}-{x}^{2}=0\]
と変形できました。
・・・なぜ、わざわざこんな変形をしたのか。
それはズバリ、、、 因数分解するためです。
上で見てきた変形により、2乗-2乗の形ができていることがわかります。
ここに、和と差の積の公式(\({a}^{2}-{b}^{2}=(a-b)(a+b)\))を利用して因数分解すると、
\[\begin{alignat*}{3}
&\{({x}^{2}+2)-x\}\{({x}^{2}+2)+x\}=0 \\
\Leftrightarrow\ &({x}^{2}-x+2)({x}^{2}+x+2)=0
\end{alignat*}\]
と変形することができます。
したがって、求める解は、以下の2つの2次方程式の解となります。
- \({x}^{2}-x+2=0\quad\)・・・①
- \({x}^{2}+x+2=0\quad\)・・・②
これを実際に解くと、
① \({x}^{2}-x+2=0\) | ② \({x}^{2}+x+2=0\) |
\[\begin{alignat*}{3} &{x}^{2}-x+2=0 \\ \therefore\ x&=\frac{1\pm\sqrt{7}i}{2} \end{alignat*}\] | \[\begin{alignat*}{3} &{x}^{2}+x+2=0 \\ \therefore\ x&=\frac{-1\pm\sqrt{7}i}{2} \end{alignat*}\] |
となり、4つの解を求めることができました!
無理やり、2乗-2乗という形を作ることで、(2次式)×(2次式)に因数分解できる!
おわりに
お疲れさまでした!今回は、複2次式について見てきました。
ポイントは、とにかく、2乗-2乗の形で因数分解したい!ということに尽きます。
このように、「やりたいことを想定して、無理やりその形を作る」というのは、少々慣れが必要です。
ぜひ、この解説を読み終わったら、お持ちの問題集などで訓練いただくことをおススメします!
ちなみに、高校数学では、解ける方程式しかほぼ出てこないため、感覚が麻痺しがちなのですが、高次方程式は、基本的に解けません。
一応、3次方程式には「カルダノの公式」、4次方程式には「フェラーリの公式」という解の公式が存在していますが、どちらも非常に複雑な形をしており、簡単に利用できるものではありません。
さらに、5次以上の方程式には、解の公式が存在しないことが証明されています。
そんな高次方程式の中で、今回見てきた複2次式型の方程式の解法などは、
頑張れば解ける上、解答までの道筋もわかりやすいという点で、非常に価値が高い
ものになります。(何といっても、原則解けないものなので。。。)
こんな、非常にありがたい複2次式型の解法。そのありがたさを少しでも共有できていると、とてもうれしいです!
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